事務員が採用できないときの選択肢は?採用以外の3つの手

事務員が採用できないときの選択肢は?採用以外の3つの手

事務員の求人を何か月も出し続けているのに応募が集まらず、既存の社員に業務を割り振ってしのいでいる、という状況になっていないでしょうか。

求人票の条件を見直したり、掲載媒体を増やしたりと打てる手は打ったつもりでも、応募自体が来なければ手の打ちようがないと感じている経営者も少なくありません。

パートやアルバイトも含めた事務員の採用は、この数年で一段と難しくなっています。

共働き世帯の増加や近隣の同業他社との条件競争により、以前と同じ求人条件では応募を検討してくれる人の数そのものが減っているためです。

この記事では、業務自動化の構築設計で使っている頻度・定型度・事故コストの判定基準をもとに、採用以外に選べる3つの手と、どの業務を自動化すれば1人分の負担が浮くかを整理しています。

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事務員の採用が難しくなっている構造

事務員の採用が思うように進まない背景には、求人票の書き方だけでは解決できない構造的な要因があります。

売り手市場という需給の問題と、事務職という職種特有の応募のされにくさが重なっているため、条件面の改善だけでは効果に限界が出やすいのが実情です。

まずはこの構造を分けて理解しておくと、どこまでを求人改善で追い、どこからを別の手段で補うべきかの線引きがしやすくなります。

売り手市場が生む構造的な難しさ

有効求人倍率が高い状態が続くと、求職者は複数の求人を比較したうえで選ぶ側に立ちます。

事務職は在宅勤務や時短勤務との相性がよいと見なされやすく、大手企業や好条件の同業他社に応募が流れやすい職種でもあります。

たとえば従業員30名規模の会社が時給1,100円で事務員を募集しても、近隣の同業他社が時給1,200円かつ週3日勤務可を提示していれば、条件面だけで比較されて応募が集まらないことがあります。

給与テーブルや勤務条件を一度に大きく変えるのは資金的にも制度的にも難しく、価格競争だけで採用を成立させるのは中小企業にとって不利な戦い方になりがちです。

求人を改善しても埋まらない部分

求人票の改善そのものは引き続き有効な手段であり、仕事内容の具体化や条件の明記といった工夫を続ける価値はあります。

ただし改善を尽くしても、地域の労働人口そのものが減っている場合や、応募が来ても業務内容とのミスマッチで早期離職につながる場合は、求人票の工夫だけでは解決しきれません。

たとえば求人票を改善して応募数が増えても、実際の業務が電話対応と経理入力の両方を兼ねる負荷の高い仕事だと判明した時点で辞退されるケースは珍しくありません。

この場合に必要なのは求人票の再改善ではなく、業務内容そのものを軽くしてから募集をかけ直すという発想の転換です。

採用以外に選べる3つの手

事務員が採用できない状況に対して、増員を諦めずに求人活動を続けながらでも、並行して選べる手が3つあります。

1つ目は業務量そのものを減らす自動化、2つ目は一部業務を社外に任せる外注、3つ目は既存社員内での業務の再配分です。

どれか1つを選ぶというより、業務の性質によって使い分ける組み合わせで考えたほうが、実際の負担軽減効果は大きくなります。

業務量そのものを減らす(自動化)

定型的で繰り返し発生する業務は、自動化によって人手を介さずに処理できる部分を増やせます。

たとえば請求書のデータをExcelへ手入力している作業や、決まったフォーマットのメールへの返信作業は、条件が固定されているため自動化との相性がよい業務です。

1人あたり1日1〜2時間かかっていた定型入力作業を自動化に置き換えられれば、その時間を採用が埋まるまでの他の業務に振り向けられます。

自動化は事務員を置き換える手段ではなく、既存の担当者が抱える業務量を圧縮し、増員なしでも回る状態に近づける手段として位置づけるのが実態に近い使い方です。

一部を外部に任せる(外注)

社内での処理にこだわらず、記帳代行や電話代行、データ入力代行といった外部サービスに一部業務を切り出す方法もあります。

外注は自動化と異なり、判断が必要な業務や表記ゆれが多い業務にも対応してもらえる柔軟性がある一方、月額の固定費が発生する点がネックになります。

たとえば毎月の記帳作業を外部の記帳代行サービスに切り出せば、社内の事務員は伝票の一次チェックだけに専念でき、繁忙期の残業を抑えられます。

外注費用の相場感や、どこまでを内製に残すべきかの分岐点は、次の記事で整理しています。

既存社員内で負担を再配分する

営業事務や経理事務など、部署ごとに業務が縦割りになっている会社では、繁忙期がずれる部署間で業務を融通し合うだけでも負担が平準化される場合があります。

たとえば月末に集中する経理事務の入力作業の一部を、月末が比較的落ち着いている総務担当が数日だけ手伝う体制に変えるだけで、特定の1人に負荷が偏る状態を緩和できます。

この方法は追加の投資が不要な反面、業務の属人化が進んでいると再配分自体が難しくなるため、まずは業務の棚卸しをして担当外の社員でも対応できる範囲を明確にしておく必要があります。

再配分と自動化は競合する手段ではなく、自動化で浮いた時間をさらに再配分に回すという順番で組み合わせると効果が積み上がります。

自動化・外注・部署間の業務整理を含めた進め方の全体像は、次の記事でも整理しています。

どの業務を自動化すれば1人分浮くかの判定基準表

自動化すべき業務を選ぶ基準は、頻度・定型度・事故コストの3つです。

頻度が高く手順が毎回同じ、つまり定型度が高い業務ほど自動化の効果が出やすく、逆にミスが起きたときの影響が大きい、つまり事故コストが高い業務は、自動化後も人によるチェックを残す設計が必要になります。

事務員が抱える典型的な業務にこの基準を当てはめると、優先度に明確な差が出ます。

業務

頻度

定型度

事故コスト

自動化の優先度

請求書・伝票処理

高い(日次〜週次)

高い(フォーマットが概ね決まっている)

中程度

顧客・在庫データの入力

高い(日次)

高い(入力項目が固定)

低〜中程度

電話・来客の一次対応

高い(日次)

低い(内容が都度異なる)

低い

低(人が担当)

請求書・伝票処理の自動化

請求書や伝票の処理は、頻度が高く手順もほぼ固定されているため、優先度の高い業務です。

たとえば月間40件の請求書を目視で確認しながら会計ソフトへ転記している場合、AI-OCR(画像から文字を読み取る技術)を使って金額・取引先名・日付を自動で読み取り、転記まで自動化できます。

1件あたり5分かかっていた作業を1分程度まで短縮できれば、月あたり2時間半ほどの作業時間が浮く計算になります。

AI-OCRで請求書処理を自動化した流れは、次の想定ケースで詳しく紹介しています。

データ入力の自動化

顧客名簿の更新や在庫数の記録といった定型入力も、入力項目が固定されている業務は自動化に向いています。

たとえば受注メールに書かれた品番・数量・納期をスプレッドシートへ手入力している場合、メールの本文から必要な情報を抽出して自動で転記する仕組みに置き換えられます。

入力ミスが受注処理や請求といった後工程にそのまま波及する業務でもあるため、自動化後しばらくは抽出結果を人が確認する運用を挟んでおくと、誤登録に早く気づけます。

フォーマットが取引先ごとにばらついている場合は精度が下がりやすいため、まずは記載形式が揃っている取引先だけを対象に始めるほうが失敗しにくくなります。

電話・来客の一次対応は自動化に向かない理由

電話対応や来客対応は、内容が毎回異なり定型化しにくいため、自動化の優先度は低くなります。

問い合わせ内容によって回答や取り次ぎ先の判断が必要になる業務であり、無理に自動化すると顧客対応の質が下がるリスクのほうが大きくなります。

この種の業務は自動化で圧縮した時間を振り向ける先として位置づけたほうが実態に合っており、対人対応の質を保つために採用活動自体は引き続き必要な領域でもあります。

求人改善を諦める必要はなく、定型業務を自動化して負担を軽くした状態で募集をかけ直すほうが、応募者にとっても働きやすい仕事内容として伝わりやすくなります。

一人の担当者に業務が集中した状態が続くリスクについては、経理職を例に次の記事で整理しています。

進め方Step

採用以外の手を組み合わせて事務業務の負担を軽くする作業は、次の4つのStepで進めます。

最初の2つのStepは費用がかからず、既存の業務を書き出して判定基準に当てはめるだけの作業のため、求人活動と並行しながらでも着手できます。

ここで作った業務の一覧は、外注や社内の再配分を検討する際の判断材料としてもそのまま使えます。

Step1. 業務の棚卸し

事務員が日次・週次・月次で行っている業務を、作業単位まで分解して書き出します。

「請求書処理」のような大分類だけでなく、「メールを受け取る」「金額を確認する」「会計ソフトに入力する」のように分けると、判定基準表に当てはめやすくなります。

Step2. 判定基準への当てはめ

棚卸しした業務それぞれに、頻度・定型度・事故コストの3つを当てはめ、自動化の優先度を判定します。

迷う業務があれば、まず1〜2週間分の作業時間を記録し、実際の頻度を数字で確認してから判定し直すと精度が上がります。

Step3. 優先度の高い業務から自動化

優先度が高いと判定された業務から着手し、既存のスプレッドシートや会計ソフトの機能で対応できる範囲がないかをまず確認します。

既存ツールで足りない部分だけを新しい仕組みに置き換えれば、初期費用を抑えながら効果の出やすい業務から負担を減らせます。

Step4. 浮いた時間の配分を決めておく

自動化によって浮いた時間を、誰が何に使うのかを事前に決めておきます。

決めないまま自動化だけを進めると、浮いた時間が他の業務になし崩しに吸収され、負担軽減の実感が得られないまま終わってしまうことがあります。

事務員を採用せず業務負担を軽くする進め方の4ステップ。業務を棚卸し→判定基準に当てはめ→優先度順に自動化→浮いた時間の配分を決定

事務員の採用難に、心当たりはありませんか。

「求人を出しても応募が来ない」「既存社員に業務が集中している」「何から自動化すればいいか社内で判断できる人がいない」

少しでもお心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。

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よくある質問

Q. 求人条件を上げれば採用できるのではないですか?

条件を上げることは有効な手段の1つですが、資金的な制約や近隣相場との兼ね合いで際限なく上げ続けることはできません。

条件面の改善と並行して、業務量そのものを軽くしておくことで、少ない人数でも回る体制を作りやすくなります。

求人改善をやめる必要はなく、自動化はその効果を補完する手段として考えるのが実態に近い使い方です。

Q. 自動化にはどれくらいの費用がかかりますか?

対象業務や既存のツールによって幅があるため、一律の金額は決まっていません。

記事内で紹介した請求書処理やデータ入力の自動化であれば、既存のスプレッドシートを使って比較的低コストで始められる場合もあります。

費用感を含めた内製と外注の分岐点は、外注費用に関する記事で整理しています。

Q. 事務員が1人しかいない状態で自動化を進められますか?

自動化を進めること自体は可能ですが、担当者が業務と並行して自動化の設計まで抱えると負荷が二重にかかります。

まずは棚卸しと判定基準への当てはめだけでも進めておき、実際の設計や構築は外部に相談しながら進める方法もあります。

1人の担当者に業務が集中する状態のリスクについては、経理職を例にした記事でも詳しく整理しています。

Q. パート・アルバイトの採用難にも同じ考え方は使えますか?

考え方は同じです。

パート・アルバイトの場合は勤務時間が短い分、業務の引き継ぎや情報共有にかかる負担が相対的に重くなりやすいため、定型業務を自動化しておくと、短時間勤務の担当者でも対応できる業務の範囲が広がります。

求人条件の柔軟性(勤務日数・時間帯の選択肢)を広げる工夫とあわせて進めると、応募のされやすさにもつながります。

Q. どの業務から手をつければ失敗しにくいですか?

判定基準表で優先度が高いと判定された、頻度が高く定型度も高い業務から着手するのが失敗しにくい進め方です。

事故コストが高い業務(振込処理や個人情報を扱う業務など)は、自動化後も人による確認を残す設計にすることで、精度と安全性の両方を確保できます。

一度に全業務を自動化しようとすると調整すべき例外が増えるため、優先度の高い業務に絞って始めるほうが、結果的に負担軽減を早く実感できます。