人を増やさずに事務を回す体制の作り方|人手不足でも省人化で回す順番

人を増やさずに事務を回す体制の作り方|人手不足でも省人化で回す順番

事務担当が1人減っただけで、請求書の発行も備品の発注も回らなくなった経験はありませんか。

求人を出しても応募が来ない、来ても採用まで数か月かかるという状況は今の中小企業では珍しくなく、人手不足を前提に事務の回し方そのものを変える必要が出てきています。

この記事では、人を増やす前に事務の絶対量を減らし、少人数でも回る体制をどう組み立てるかを、判定基準表と兼務設計の具体例から整理しています。

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人手不足の事務は「採用」より先に「事務の絶対量を減らす」

人手不足の相談を受けると、多くの会社がまず求人票の見直しや採用条件の緩和を検討します。

ですが求人を出してから採用が決まるまでには数か月かかることが多く、その間も事務は毎日発生し続けます。

先に着手すべきなのは、今ある事務の量そのものを減らし、残った量を少人数でまとめ、最後に機械へ渡すという順番です。

採用条件を緩めて急いで採用しても、教育に手が回らないまま現場に投入すれば、かえって既存メンバーの負担が増えることも珍しくありません。

だからこそ、採用の可否とは別に「今の人数で事務を回すにはどうするか」という体制設計を先に済ませておく価値があります。

なお本記事は「人を増やさない」前提での体制設計を扱うもので、採用条件の見直しや育成・定着といった採用そのものの改善策は対象にしていません。

人を増やさずに事務を回す体制の3段階

事務の絶対量を減らすといっても、いきなりすべての業務を疑ってかかると現場が混乱します。

順番を決めて進めると、少人数でも回る体制に無理なく移行できます。

まず1段階目は「減らす」です。

月次で作成しているが誰も見ていない報告書をやめる、週次で行っていた確認を月次に下げるなど、業務そのものをやめるか頻度を落とします。

現場の担当者は「昔からやっているから」という理由だけで続けている作業を疑いにくいため、経営層や管理職が一度棚卸しに関わり、外部の目で必要性を判断する場面を作ることも有効です。

2段階目は「まとめる」です。

1人1業務の割り振りを見直し、似た性質の作業を1人がまとめて処理できるように役割を再設計したり、バラバラに発生していた処理を週に1回のバッチ処理にまとめたりします。

たとえば毎日少しずつ発生する経費の入力を、都度処理から週1回のまとめ処理に変えるだけでも、作業の立ち上げにかかる時間が減り、体感の負担が下がることがあります。

3段階目が「自動化」で、まとめた後の定型作業を機械に渡します。

自動化を最初に検討したくなる会社は多いのですが、減らす・まとめるを済ませてから自動化した方が、対象業務が絞られている分だけ設計がシンプルになり、導入後の運用も軽くなります。

逆の順番で自動化から着手すると、本来は減らせたはずの業務まで自動化の対象に含めてしまい、開発や設定にかけた工数が丸ごと無駄になることもあります。

3段階は一度きりで終わる作業ではなく、半年や1年といった周期で見直すことを前提にしておくと、業務量が増えたときにも同じ手順で対応できます。

業務そのものをやめる→似た業務をまとめる→定型作業を自動化する

効率化する事務の選び方(頻度・定型度・事故コストの判定基準表)

3段階のどれを事務のどの業務に当てはめるかを決めるには、頻度・定型度・事故コストという3つの基準で業務を評価すると判断がぶれません。

頻度は月に何回発生するか、定型度は毎回同じ手順で処理できるか、事故コストは間違えたときの被害の大きさを指します。

次の表は、代表的な事務業務にこの3基準を当てはめ、どの段階から着手すべきかを整理したものです。

業務例

頻度

定型度

事故コスト

着手する段階

定例報告書の作成

低い(月次)

高い(様式固定)

低い(誰も見ていない場合あり)

まず「減らす」(廃止・頻度削減を検討)

請求書・見積書の発行

高い(週次〜月次)

高い(様式固定)

中程度(誤記載は再発行で対応可)

「まとめる」→「自動化」

経費精算のチェック

高い(月次・件数分)

中程度(例外あり)

中程度(誤処理は修正可能)

「まとめる」で兼務範囲に統合

給与・支給に関わる処理

高い(月次締め集中)

中程度(例外対応が残る)

高い(誤りは信頼問題に直結)

自動化後も最終確認は人に残す

頻度と定型度がどちらも高く事故コストが相対的に低い請求書発行のような業務は、まとめてから自動化すると効果が出やすい業務です。

一方で定例報告書のように頻度と事故コストがどちらも低い業務は、自動化する前にそもそも必要かどうかを疑い、廃止や頻度削減の対象として先に検討してください。

自社の業務をこの表に当てはめる際は、件数や頻度だけで判断せず、間違えたときにどこまでの被害が出るかを必ず確認する必要があります。

また経費精算のように例外対応が混ざる業務は、定型度が中程度にとどまるため、いきなり全件自動化を狙わず、まとめる段階で兼務範囲に組み込んでから自動化の対象を絞り込む方が現実的です。

判定基準表を使った優先順位づけの詳しい考え方は、次の記事でも整理しています。

少人数で回す役割再配分と属人化させない兼務設計

人を増やさずに回す体制で最も崩れやすいのが、兼務の設計です。

1人に業務を寄せすぎると、その人が休んだ瞬間に業務が止まり、結局は属人化を固定するだけの兼務になってしまいます。

そこで有効なのが、1つの業務に対して主担当と副担当の2名を薄く割り当てる設計です。

副担当は普段その業務にほとんど関わらなくても構いませんが、手順書を見れば最低限の処理はできる状態にしておきます。

このとき鍵になるのが手順の記録で、担当者の頭の中にしかない判断基準や例外処理を、簡単な手順書としていつでも他の人が参照できる形にしておくことです。

手順書は完璧な業務マニュアルである必要はなく、まず「これさえ見れば代わりが務まる」レベルの最小限の記録から始めれば十分です。

副担当を決める際は、負荷の高い人にさらに副業務を積むのではなく、比較的余力のある人へ薄く配分することが前提になります。

主担当と副担当の組み合わせを業務ごとに固定してしまうと、結局は2人がかりで属人化する構図に戻ってしまうため、四半期ごとに組み合わせを入れ替えるなどの工夫も有効です。

標準化・マニュアル化を組織の文化として根づかせる進め方は、次の記事で詳しく扱っています。

役割再配分そのものが、事実上の採用抑制策として機能する場面もあります。

採用が難しい時期に人を増やさずに済む体制を作れれば、無理な採用条件の緩和や妥協した採用を避けられるという意味で、採用の実情を扱う次の記事とも接続しています。

ツール・自動化・外注の使い分け

減らす・まとめるを終えた業務を機械に渡す段階になったら、自動化するか外注するかの判断が必要になります。

判定基準表で頻度と定型度がどちらも高く事故コストが低い業務は、自動化の効果が出やすく、Google スプレッドシートと Google Apps Script のような既存の仕組みだけでも十分に対応できることが多いです。

一方で、社内にノウハウが乏しい専門性の高い業務や、繁忙期だけ一時的に処理量が跳ね上がる業務は、自動化よりも外注の方が早く負荷を下げられる場合があります。

判断に迷ったときは、自動化は「毎回同じ手順を機械に渡す」選択肢、外注は「専門知識か一時的な処理量の波を外部に渡す」選択肢と整理すると使い分けやすくなります。

どちらを選ぶ場合も、いきなり全業務を切り替えるのではなく、判定基準表で優先度が高いと出た業務から1つずつ検証しながら進めることが、少人数体制での失敗を避ける前提になります。

外注を選んだ場合も、業務を丸ごと手放すのではなく、判断が必要な部分だけ社内に残し、定型処理だけを渡す切り分けをしておくと、委託先とのやり取りにかかる手間まで増えてしまう事態を防げます。

自動化と外注は排他的な選択肢ではなく、同じ業務の中で工程ごとに使い分けることも珍しくありません。

たとえばデータの入力や集計は社内で自動化しつつ、専門知識が必要な最終チェックだけを税理士や社会保険労務士のような外部の専門家に委ねる組み合わせは、少人数のバックオフィスでよく見られる形です。

ツール選定に時間をかけすぎるのも避けたいところで、まずは今使っているスプレッドシートや既存システムの範囲で自動化できないかを確認し、それでも足りない場合に新しいツールの導入を検討する順番が無駄を減らします。

人手不足の事務効率化を進める4ステップ

ここまでの考え方を、実際に自社で進める手順として整理します。

Step1. 事務にかかっている時間を測る

まず1〜2週間、日々の事務作業に何分かかっているかを記録します。

感覚だけで「この業務は重い」と判断すると、実際には軽い業務を優先してしまうことがあるため、実測値を取ることが最初の一歩になります。

時間の棚卸しをどう行うかは、次の記事でより具体的に扱っています。

Step2. 判定基準表に自社の業務を当てはめる

測った時間と、業務ごとの頻度・定型度・事故コストを判定基準表に当てはめ、減らす・まとめる・自動化のどの段階から着手すべきかを決めます。

このとき部署や担当者によって業務の呼び方が違うことがあるため、表に落とし込む前に用語をそろえておくと、後で複数人で確認する際の食い違いを防げます。

Step3. 1つの業務から小さく着手する

優先度が最も高い業務を1つだけ選び、そこから着手します。

複数の業務を同時に見直すと、少ない人数で選定と運用調整まで抱えることになり、日常業務がかえって圧迫される時期ができてしまいます。

選ぶ業務に迷ったら、判定基準表の優先度に加えて、担当者本人が「これなら小さく試せそう」と感じているかどうかも判断材料に加えると、現場の納得感を得やすくなります。

Step4. 減った時間を確認してから次に広げる

1つ目の業務で削減できた時間を確認できてから、次の業務に着手します。

最初の業務で分かった注意点を次の設計に反映させることで、同じつまずきを繰り返さずに進められます。

効果の確認は「時間が減ったかどうか」だけでなく、「休んでも業務が止まらなくなったか」という属人化の解消度合いも合わせて見ておくと、体制そのものが強くなっているかを判断しやすくなります。


人を増やさずに事務を回したいと考えていませんか。

「求人を出しても人が来ない」「今いる人数で回すしかないが、どこから手をつければいいか分からない」「兼務を増やしたら結局誰かが倒れそうで踏み切れない」

少しでも心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。

現在、人手不足の事務体制づくりに関するお悩みをお伺いする 無料の個別相談 を実施しています。

よくある質問

Q. 人手不足の事務効率化は、何から着手すべきですか?

いきなり自動化から検討するのではなく、まず今ある業務を「減らせないか」から見直すのが安全です。

そのうえで判定基準表を使い、頻度・定型度が高く事故コストが低い業務から着手すると、効果が数字として見えやすくなります。

Q. 小規模企業でも同じ方法でよいですか?

同じ考え方が使えます。

むしろ担当者が少ない会社ほど、減らす・まとめる・自動化の順番を守らずに自動化から着手すると、対象業務が絞り込めておらず運用が崩れやすいため、小規模企業ほど順番を丁寧に踏む価値があります。

専任の情報システム担当者がいない会社でも、判定基準表で対象業務さえ絞り込めれば、既存のスプレッドシートを使った小さな自動化から始められます。

Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

業務の複雑さによって幅がありますが、時間の計測から1業務目の着手までは数週間、効果を実感できるまでは1〜2か月程度が目安です。

複数業務に同時着手すると検証が難しくなるため、1業務ずつ進めることが結果的に近道になります。

体制づくりそのものに終わりはなく、業務量や人員構成の変化に合わせて、減らす・まとめる・自動化の3段階を定期的に見直す前提で運用します。

見直しの頻度は半年に1回程度を目安にすると、日常業務を圧迫せずに続けられます。