システム開発会社に相談したら数百万円という見積もりが返ってきて、業務自動化そのものを諦めかけていませんか。
その金額は要件定義から設計・開発・保守までを含むシステム開発としての見積もりで、業務自動化の選択肢のごく一部でしかありません。
低コスト帯には、社内の既存ツールで完結する方法から、外部に小さく依頼する方法まで、いくつもの段階があります。
この記事では、業務自動化の構築設計で使っている判定基準をもとに、低コスト帯の選択肢を整理し、自社に合う選び方までを解説しています。
「数百万円の見積もりで諦めた」という誤解の構造
見積もりを取ってみたら数百万円と言われ、そこで検討を止めてしまう会社は少なくありません。
出てきた金額が、要件定義・設計・開発・保守までを一貫して請け負うシステム開発の見積もりだったからです。
業務そのものを新しいシステムに置き換える発注であれば、この金額感は妥当な水準ですが、日々の定型作業を自動化したいだけであれば、まったく別の依頼をすべきだったことになります。
JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の企業IT動向調査2025では、内製化を阻害する要因として『開発人材の量の不足』を挙げた企業が50.8%にのぼりました。
社内に開発を担える人がいないと、相談先も開発会社しか思いつかず、結果として最初から数百万円規模の見積もりしか比較対象に残らないという構造があります。
出典:JUAS「企業IT動向調査2025」
しかし実際には、数百万円のシステム開発と、日々の定型作業を自動化する話のあいだには、いくつもの低コスト帯の選択肢が存在します。
以下、その選択肢を順に見ていきます。
低コスト帯の選択肢は4つに分かれる
低コストで業務自動化を始める方法は、大きく4つの選択肢に分かれます。
すでに契約しているクラウドサービスの自動化機能を使う方法、Google Apps ScriptやPower Automateなどのローコード開発、業務特化型のSaaSへの乗り換え、そして対象業務を絞ったスポット外注です。
どれを選ぶかによって、必要な社内リソースとかかる費用がまったく違ってきます。
まず全体像を比較表で押さえてから、それぞれの特徴を見ていきます。
| 選択肢 | 主な費用 | 必要なもの | 向くケース |
|---|---|---|---|
| 既存ツールの自動化機能 | 追加費用なし(既存契約の範囲内) | 設定できる担当者 | 対象業務が1つのクラウドサービス内で完結する |
| ローコード開発(内製) | 追加費用なし(担当者の稼働時間のみ) | コード・設定を書ける担当者 | 社内にGoogle Apps Script・Power Automateを触れる人がいる |
| 業務特化型SaaS | 月数千円~数万円(目安) | 導入・設定の担当者 | 業務のやり方をSaaS側の標準運用に合わせられる |
| スポット外注 | 1万円~10万円(目安) | 依頼内容を整理する担当者 | 対象業務を1つに絞れているが社内に作れる人がいない |
既存ツールの自動化機能
すでに契約しているクラウドサービスには、追加費用なしで使える自動化機能が用意されていることが多くあります。
Google WorkspaceやMicrosoft 365には、条件に応じて通知を送ったりファイルを整理したりする設定機能が標準搭載されていて、契約プランの範囲内でそのまま使えます。
この選択肢が向くのは、対象業務がひとつのクラウドサービスの中だけで完結している場合です。
反対に、複数のクラウドサービスをまたいでデータを受け渡す必要がある業務では、標準機能だけでは処理しきれず、次のローコード開発が必要になります。
ローコード開発(Google Apps Script・Power Automate)
Google Apps ScriptやPower Automateといったローコードのツールを使えば、複数のクラウドサービスをまたぐ処理や、条件分岐を含む処理も自動化できます。
社内にコードや設定を書ける担当者がいれば、追加費用なしで内製できるのがこの選択肢の強みです。
ただし習得には数日から数週間程度の時間がかかり、担当者がほかの業務と兼務している会社では、着手したものの完成しないまま止まってしまうケースも見られます。
どちらのツールを選ぶべきかは環境によって判定基準が変わるため、比較記事を先に確認しておくと選びやすくなります。

業務特化型SaaS
経費精算や勤怠管理のように、業務のやり方そのものが定型化されている領域では、自社で自動化を組むより、その業務専用に作られたSaaSに乗り換えたほうが早く安く済むことがあります。
費用は月数千円~数万円程度が目安で、利用人数や機能範囲によって変わります。
この選択肢が向くのは、自社独自の承認ルールや帳票フォーマットへのこだわりが薄く、SaaS側の標準的な運用フローに合わせられる場合です。
逆に独自ルールを維持する必要がある業務では、SaaSの標準機能に収まりきらず、結局ローコード開発や個別の外注が必要になることがあります。
スポット外注
社内に自動化を組める担当者がいない場合、対象業務を1つに絞ってスポットで外注する方法があります。
公開されている案件情報からの目安として、1万円~10万円程度で依頼できるケースが多く見られます。
この価格帯で外注する場合、対象業務・現状の手順・処理件数を自社側であらかじめ整理しておくことが前提になり、丸投げに近い曖昧な依頼では受けてもらえないか、追加費用が発生します。
外注の相場や価格帯ごとの内訳をさらに詳しく知りたい場合は、別の記事で整理しています。

どの選択肢が合うかの判定基準
4つの選択肢のうち何を選ぶかは、『社内に対応できる担当者がいるか』と『対象業務が1つのクラウドサービス内で完結するか』の2つの軸でおおむね決まります。
軸が交差する位置によって、選ぶべき選択肢は次のように変わります。
| 社内に対応できる担当者がいる | いない | |
|---|---|---|
| 1つのサービス内で完結する | 既存ツールの自動化機能 | 業務特化型SaaSかスポット外注 |
| 複数サービスをまたぐ | ローコード開発(内製) | スポット外注 |
社内に担当者がいて業務も1つのサービス内で完結するなら、追加費用なしの既存機能で足りることがほとんどです。
複数サービスをまたぐ処理を内製したい場合は、担当者の稼働時間を確保できるかが分かれ目になり、確保できないなら無理に内製せずスポット外注に切り替えたほうが早く進みます。
なお、対象業務が複数部署にまたがっていたり、専用のデータベースや画面を新しく作る必要があったりする場合は、ここまでの4つの選択肢では収まらず、最初に見た数百万円規模のシステム開発の検討に戻ることになります。
低コスト帯で解決できる範囲かどうかを見極めることが、最初の判断で最も差がつくポイントになります。
小さく始めて広げる進め方
選択肢と判定基準が整理できたら、実際に着手する段階に入ります。
いきなり複数業務をまとめて自動化しようとせず、次の順番で進めると手戻りが少なくなります。
Step1. 対象業務を1つに絞って検証する
最初に自動化する業務は1つだけに絞ります。
最も発生頻度が高い、あるいは最も時間を取られている業務を1つ選び、その1本で実際に効果が出るかを検証します。
複数業務をまとめて手を付けると、途中でどこに問題があるのか切り分けられなくなり、結局止まってしまいます。
Step2. 選択肢を判定基準に当てはめる
検証対象の業務が決まったら、前の章の判定基準に当てはめて、既存ツールの自動化機能・ローコード開発・業務特化型SaaS・スポット外注のどれに該当するかを確認します。
社内リソースの有無を楽観的に見積もらず、実際に稼働時間を確保できる担当者がいるかどうかで判断することがポイントです。
Step3. 効果を確認してから対象業務を広げる
1本目の自動化で効果が確認できたら、同じ選択肢のまま対象業務を広げていきます。
1つの業務で成立した仕組みは、似た構造の別業務にもそのまま応用できることが多く、2本目以降は着手の負担が下がります。
検証段階の進め方をさらに詳しく知りたい場合は、小さく始めて広げる手順を扱った記事も参考になります。

見積もりの前に相談してみませんか?
「システム開発の見積もりが高すぎて、他に方法があるのか判断できない」「自社の業務がどの選択肢に当てはまるのか自分では決められない」「社内に自動化を設計できる人材がいない」
少しでもお心当たりがあれば、見積もりを取る前に、お気軽にご相談ください。
現在、業務自動化に関するお悩みをお伺いする 無料の個別相談 を実施しています。
よくある質問
Q. システム開発の相見積もりが数百万円でした。これは高すぎるのでしょうか。
要件定義から設計・開発・保守までを含むシステム開発の発注であれば、数百万円という水準自体は妥当な場合が多く見られます。
ただし、日々の定型作業を自動化したいだけであれば、この記事で紹介した低コスト帯の選択肢で足りることがあります。
Q. 社内に開発できる人がいなくても、ローコード開発は選べますか。
社内に対応できる担当者がいない場合は、ローコード開発そのものを対象業務ごとスポットで外注する方法があります。
公開されている案件情報からの目安として、1万円~10万円程度で依頼できるケースが多く見られます。
Q. 業務特化型SaaSとローコード開発、どちらを先に検討すべきですか。
自社独自の承認ルールや帳票フォーマットへのこだわりが薄く、標準的な運用フローに合わせられる業務であれば、業務特化型SaaSを先に検討したほうが早く済みます。
独自ルールを維持する必要がある業務では、ローコード開発かスポット外注のほうが向いています。
Q. 低コスト帯で対応できるかどうか、自分では判断がつきません。
対象業務が1つのクラウドサービス内で完結するか、複数部署にまたがるか、専用のデータベースや画面が必要かどうかが判断の目安になります。
判断がつかない場合は、対象業務を整理したうえで相談すると、どの選択肢に当てはまるかを一緒に確認できます。