FAXをやめたい会社の段階的な廃止手順と代替手段

FAXをやめたい会社の段階的な廃止手順と代替手段

FAXの受発注や請求書のやり取りに手間を感じながらも、取引先が使い続けている以上やめられないと諦めていませんか。

社内だけで完結する業務なら切り替えは早いですが、FAXは相手があるやり取りのため、自社の都合だけで廃止を決められない難しさがあります。

インターネットFAXやクラウド型のEDIが普及し、紙のFAXを使わずに同じやり取りを続けられる手段はこの数年で確実に増えました。

一方で、取引先の年齢層やITリテラシーはさまざまで、性急な切り替えは相手との関係を損なうリスクも抱えています。

この記事では、業務自動化の構築設計で使っている判定基準をもとに、FAXがやめられない理由の分解、代替手段の比較、取引先に配慮した段階的な移行の進め方を整理しています。

FAX廃止の進め方を無料で相談する

FAXをやめられない理由の分解

FAXの廃止が進まない会社を見ていくと、原因は一つではなく、取引先都合、業界慣習、社内運用という性質の異なる3つの理由が絡み合っています。

このうちどれが自社の主因かを見極めずに「とりあえずインターネットFAXを導入する」といった対症療法から入ると、根本の理由が残ったままで効果が出ません。

まず自社がどの理由で止まっているのかを切り分けることが、代替手段を選ぶ前の最初の作業です。

取引先都合

最も多いのが、自社は切り替えたくても取引先がFAXしか使えないというケースです。

発注元が高齢の経営者一人で運営している小規模店舗だったり、システム部門を持たない零細の仕入れ先だったりすると、メールやWebフォームへの切り替えを提案しても対応してもらえません。

この場合、取引先の数が多いほど「一部だけFAXが残る」状態が長期化しやすく、社内では旧来のFAX受信フローと新しいデジタル受信フローの二重運用が発生します。

二重運用が半年、1年と続くと、結局どちらのフローも中途半端なまま担当者の負担だけが増えていくという事態にもなりかねません。

取引先都合が主因の会社では、いきなり全取引先への一斉切り替えを狙わず、デジタル対応が可能な取引先から先に移行し、FAXでしか対応できない取引先だけを最後まで残すという分割統治の発想が現実的です。

業界慣習

建設・製造・卸売のように、業界全体の商習慣としてFAXでの発注書・注文請書のやり取りが定着している業種では、自社1社が抜けても業界標準が変わりません。

同業他社も同じ紙のフォーマットを使い続けているため、自社だけFAXをやめると発注書の書式が業界の慣例と合わなくなり、かえって取引先に手間をかけてしまう場合があります。

業界慣習が主因の場合は、FAXという窓口そのものを外部から急に外さない判断が現実的です。

受信したFAXを社内側でデジタルデータに変換する仕組みを先に入れ、対外的なやり取りの形式は維持したまま、社内の手入力だけを減らす順番を検討します。

社内運用

取引先や業界の事情が原因ではない場合もあります。

単に社内の担当者がFAX以外のやり方に慣れていない、あるいは長年の業務フローを変えることに抵抗があるという理由だけで残っているケースです。

この場合は対外的な制約がないため最も改善の余地が大きい一方で、担当者の説得や移行後の運用ルール作りといった社内側の調整に時間がかかります。

社内運用が主因かどうかを見分ける目安は、取引先に直接聞いてみることです。

「メールやフォームでの発注に切り替えても構いませんか」と尋ねて多くの取引先が了承する場合、ボトルネックは社内側にあると判断できます。

代替手段の比較(メール・フォーム・インターネットFAX・EDI)

FAXの代替手段は大きく4つに分かれ、どれを選ぶかは前章で特定した主因と、取引先のITリテラシーによって変わります。

メールやフォームは切り替えのハードルが低い一方、相手側に入力の手間が残ります。

インターネットFAXやEDIは、相手側の負担を変えずに社内の受信・保存だけをデジタル化できる点が特徴です。

費用感も手段によって差が大きいため、比較表で全体像を押さえてから自社に合う手段を選ぶ流れが無駄がありません。

手段

取引先側の変化

社内側の効果

費用感の目安

メール

発注書をメール添付で送るだけで済む

転記の手作業は残るが検索・保管は楽になる

既存の環境で無料

Webフォーム

フォーム入力に慣れが必要

回答がそのままデータになり転記が不要

無料〜月数千円

インターネットFAX

変化なし(従来どおりFAX機で送信)

紙が減り、PDFやメールで受信・検索できる

月数千円〜1万円台

EDI(電子データ交換)

システム同士の接続設定が必要

受発注データが自動で基幹システムに反映される

導入時数十万円〜・月額別途

前章の3分類と重ねると、選び方の目安が見えてきます。

取引先都合が主因の会社はインターネットFAXのように相手側の操作を変えない手段が現実的で、業界慣習が主因の会社もまずは同じ路線が扱いやすくなります。

社内運用が主因の会社は、相手にも切り替えを打診できる立場にあるため、メールやフォームによる社内側の効率化効果を優先して選びやすくなります。

なお、EDIやインターネットFAXの一部はNTT東日本・西日本のISDN回線(INSネット)を利用しています。

同回線は2028年12月31日に完全終了する予定で、この期限までに回線を含めた見直しが必要になる会社があります。

現在ISDN回線でFAXやEDIを運用している会社は、代替手段の検討を先送りにできない期限があることも判断材料に加えておきます。

出典:NTT東日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」

FAX・メール受注のシステム登録を自動化した部品製造業の構築例は、以下のケースで紹介しています。

取引先に配慮した段階的な移行Step

代替手段を決めた後の進め方を誤ると、取引先への配慮に欠けた切り替えとして反発を招きます。

FAXという窓口を急になくす発想ではなく、選択肢を増やしながら少しずつ比重を移していく進め方が、取引先との関係を壊さずに移行を進めるコツです。

Step1. 取引先を移行しやすさで分類する

まず全取引先を、デジタル対応が問題なくできそうな取引先、多少の説明が必要な取引先、FAXでしか対応できなさそうな取引先の3段階に分けます。

分類の目安は、普段のメールでのやり取りの有無や、担当者の年齢層、過去にシステム連携の話が出たことがあるかどうかです。

この分類ができていないまま一律の案内を送ると、対応できない取引先からの問い合わせ対応に追われ、移行そのものが停滞します。

Step2. 対応しやすい取引先から個別に案内する

分類の1段階目、デジタル対応が問題なくできそうな取引先から順に、メールやフォームへの切り替えを個別に案内します。

一斉のお知らせでなく担当者名を添えた個別連絡にすることで、押し付けでなく相談として受け止めてもらいやすくなります。

たとえば取引先が30社ある会社で、そのうち10社がすぐに切り替え可能な層だとすれば、まずこの10社との移行を先行させ、社内の運用フローを固めてから次の層に進む順番が安全です。

Step3. 移行期間はFAXと新しい手段を並行稼働させる

切り替えに同意した取引先についても、案内後すぐにFAXの受付を止めず、1〜2ヶ月程度は両方の窓口を残しておきます。

並行稼働の期間を設けることで、取引先側の操作ミスや連絡漏れがあってもFAX経由で発注が届き、機会損失を防げます。

新しい手段での発注件数が安定して増えてきたら、その時点でFAX窓口の案内を控えめにしていく形が自然です。

Step4. 残ったFAX取引先は社内側の受信をデジタル化する

案内を出しても最後まで切り替わらない取引先については、無理に説得を続けるより、インターネットFAXへの切り替えなど社内側だけで完結する対策に切り替えます。

取引先には従来どおりFAX機で送ってもらいながら、社内では届いたFAXをPDFデータとして受信し、検索や保管をデジタル化することで、対外的な摩擦を起こさずに社内の負担だけを減らせます。

FAXを段階的に廃止する移行手順の4ステップ。取引先を移行しやすさで分類→対応しやすい取引先から案内→FAXと新手段を並行稼働→残った先は社内側の受信をデジタル化

社内側の一次受け皿をデジタル化する発想は、FAX以外の窓口にも応用できます。

問い合わせメールの受付を自動で仕分ける仕組みについては、以下の記事で扱っています。

社内側の手入力を減らす取り組みが実際にどのくらいの効果につながるかは、業種を問わず参考になる事例があります。

京都のフィルム加工業ONO plus(中小製造業)では、メール共有システムの導入によって返信の催促メールが週15〜20件から0件になり、月間で約88時間の削減につながったと報告されています。

FAXそのものの事例ではありませんが、紙や個人任せのやり取りを仕組みで受け止める形に変えると、中小企業の規模でもこの程度の時間が浮く可能性があるという相場観として押さえておく価値があります。

出典:yaritori「ONO plus導入事例」

FAXを残したほうがよいケース

移行を急ぎすぎて失敗するパターンの多くは、どんな取引先も同じ手順で切り替えられると考えてしまうことです。

一部の取引先や業務は、無理に廃止を進めるより残す判断のほうが合理的な場合があります。

高齢の担当者が一人で運営している零細の取引先や、発注量が月に数件程度しかない取引先は、切り替えの説明コストに対して得られる効果が小さく、移行の優先順位を下げてよい相手です。

また契約書や図面のように内容の正確性が特に重要な書類は、送信ミスや誤送信のリスクを考え、当面はFAXでの確認と新しい手段への移行を並行させたほうが安全と判断できます。

自社のどこから業務のデジタル化に着手すべきか整理したい場合は、次の記事も参考になります。

現場作業の記録や報告をデジタル化する進め方については、以下の記事でも扱っています。


FAX廃止の進め方について相談してみませんか?

「取引先の反発が怖くて切り替えを言い出せない」「どの手段を選べばいいか判断できない」「社内にデジタル化を推進できる人材がいない」

少しでもお心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。

現在、FAX廃止・業務デジタル化に関するお悩みをお伺いする 無料の個別相談 を実施しています。

よくある質問

Q. 取引先の反発が怖くて切り替えを言い出せません。どうすればいいですか?

いきなり全取引先に一斉通知するのでなく、まずデジタル対応が問題なくできそうな取引先から個別に相談する進め方に変えると反発は起きにくくなります。

FAXの受付窓口を残したまま新しい手段を追加する形にすれば、取引先にとっては選択肢が増えるだけになり、抵抗感は小さくなります。

Q. インターネットFAXとEDIはどちらを先に検討すべきですか?

取引先側の操作を一切変えたくない場合はインターネットFAXが先です。

受発注データを基幹システムに自動反映させたいなど、社内側の効果を大きく求める場合はEDIの検討価値が上がります。

ただし導入コストと接続設定の手間が大きいため、まず数社との間で試験的に運用してから広げる進め方が安全です。

Q. 従業員10名程度の会社でもFAX廃止は現実的ですか?

現実的です。

取引先の数が少ないほど個別対応の負担が小さく、全取引先を分類して順番に案内する進め方も短期間で終えられます。

まずはメールでのやり取りに応じてくれる取引先を洗い出すところから始めるのが取り組みやすい第一歩です。

Q. FAXを完全になくすことを目標にすべきですか?

必ずしもそうとは限りません。

高齢の担当者が一人で運営している零細の取引先や、発注件数が少ない取引先まで無理に切り替えようとすると、説明コストに見合う効果が得られない場合があります。

FAX窓口を一部残しながら、対応可能な取引先や社内側の受信をデジタル化していく形でも十分に効果は出ます。

Q. 移行を進める担当者は誰が適任ですか?

普段から取引先とのやり取りを担当している事務や営業の担当者が適任です。

取引先ごとの事情や関係性を把握している人が案内を出すほうが、システム担当者だけで進めるより反発が起きにくく、分類の精度も上がります。

Q. 移行がうまくいっているかはどう確認すればいいですか?

月ごとに、FAX経由の発注件数とメールやフォーム経由の発注件数を数えて比較するとわかります。

新しい手段の件数が想定どおり増えていない場合は、案内の出し方や対象取引先の分類を見直す必要があるサインです。