電話が鳴るたびに事務や営業の手が止まり、取り次ぎと伝言に追われていませんか。
減らしたい気持ちはあっても、顧客を待たせてしまう、素っ気ない対応になって失礼にあたるのではという迷いがブレーキになっているかもしれません。
チャットボットや自動応答、クラウド型の電話サービスがこの数年で普及し、電話を減らす手段そのものは増えました。
ただ、手段が増えた分だけ、自社にどれが合うのかを選ぶ難しさが残っています。
この記事では、業務自動化の構築設計で使っている判定基準をもとに、電話の内訳の記録方法から、内訳ごとに効く4つの手段の使い分け、顧客に失礼にならない移行の進め方までを整理しています。
まず電話の内訳を1週間記録する
手段を選ぶ前に、自社にかかってくる電話が何の電話なのかを数えることから始めます。
内訳を数えずにツールを選ぶと、営業電話が多い会社にFAQを置いたり、緊急連絡が多い会社に自動応答を入れたりと、的外れな投資になりがちだからです。
記録する分類は4つです。
- よくある質問系(営業時間、所在地、料金、サービス内容などの定型的な問い合わせ)
- 注文・依頼系(発注、見積依頼、予約、申し込みなど手続き目的の電話)
- 営業電話(自社への売り込み、広告掲載の勧誘など)
- 緊急連絡(クレーム、事故報告、当日キャンセルなど即対応が必要な電話)
やり方は難しくありません。
電話を受けた人が、着信のたびに正の字か1行メモで4分類のどれかにチェックを入れるだけです。
1週間分たまれば、全体に占める各分類の割合が見えてきます。
たとえば1日30件の着信のうち、よくある質問系が12件、注文・依頼系が8件、営業電話が7件、緊急連絡が3件だったとします。
この内訳なら、まずよくある質問系と注文・依頼系の合計20件、全体の3分の2に効く手段から着手するのが投資対効果の高い順番です。
逆に緊急連絡の比率が高い会社は、電話そのものを減らす発想より、電話を残したまま対応時間を短縮する方向で考えたほうが実情に合います。
電話を減らす4つの手段
電話を減らす手段は大きく4つに分かれ、それぞれ効く内訳が違います。
よくある質問系にはFAQやチャットボットが効き、注文・依頼系はフォームへの置き換えで対応できるという関係です。
一次受けの取り次ぎ自体を減らしたい場合は自動応答が向いていて、営業電話は着信の時点で仕分ける仕組みが役に立ちます。
どれか1つを選ぶのではなく、内訳の多い分類から順に組み合わせていくのが基本の考え方で、次の内訳別対応表でまとめる前に、まず4つの手段の中身を見ていきます。
よくある質問はWebに置く(FAQ・チャットボット)
営業時間や料金、所在地といった定型的な質問は、Webサイトに答えを置いておけば電話をかける必要そのものがなくなります。
FAQページに主要な質問を10~20項目並べるだけでも、よくある質問系の着信は一定数減ります。
さらに踏み込む場合は、サイト右下に置くチャットボットに定型回答を学習させ、営業時間外でも即答できるようにする構成があります。
失敗しやすいのは、FAQを作った後に案内せず放置するパターンです。
サイトの奥深くに置かれたFAQは誰にも見つけられず、結局電話で同じ質問が続きます。
問い合わせフォームや電話の自動音声で「よくある質問はこちら」と誘導する導線をセットで作らないと効果が出ません。
また、質問の答えが日々変わる業種(在庫状況や当日の空き状況など)は、FAQが古くなって逆に信頼を落とすため向きません。
メールでの問い合わせ対応そのものを自動化する場合の対象業務の選び方は、次の記事で詳しく整理しています。

注文・依頼はフォームに置き換える
発注や見積依頼、予約のように「何かをお願いする」目的の電話は、Webフォームに置き換えると聞き漏らしや転記ミスが同時に減ります。
電話口で品番や数量を聞き取ってメモし、後で在庫システムに入力し直すという二度手間がなくなり、フォームの回答がそのままデータとして残ります。
たとえば注文電話が1日20件、1件あたりの応対と転記に4~5分かかっている場合、担当者は毎日約1.5時間を電話対応に使っている計算になります(試算)。
フォームへの置き換えが進めば、この時間の大部分を出荷準備などの本来の業務に回せます。
ただし、口頭でのやり取りの中で在庫状況を確認しながら数量を決めたいという常連客が多い業態では、フォーム一本化は不便に感じられます。
フォームと電話の両方を残し、フォームを推奨導線にする形が現実的です。
一次受けを自動応答に任せる(IVR)
かかってきた電話に自動音声が応答し、用件を選択させたり、内容を録音して要約したりする仕組みがIVR(自動応答システム)です。
一次受けを自動応答に任せると、担当者は電話が鳴るたびに手を止める必要がなくなり、要約されたテキストを空いた時間にまとめて確認できます。
公開されている導入事例では、コパ・コーポレーションがIVRyの導入でコールセンターにかかる費用を月60万円から約5分の1まで下げたことが紹介されています。
出典はIVRy公式サイトの機能紹介ページ(ivry.jp/function/call-recording-transcription/)です。
この事例は自動応答と通話録音、AIによる要約を組み合わせた構成で、電話を完全になくすのではなく、一次受けの人手を機械に置き換えた結果です。
向かないのは、取引先ごとに個別事情が絡む込み入った相談が中心の窓口です。
自動音声の選択肢では拾いきれない相談が多いと、かえって顧客が電話を切ってしまい、機会損失につながります。
一次受け対応の要約から記録までの流れをまとめたモデルケースはこちらです。
営業電話は着信の段階で仕分ける
自社への売り込みや広告掲載の勧誘といった営業電話は、応対そのものが本業と無関係な時間の消費です。
着信時点で「営業目的ですか」と自動音声で確認し、該当する場合は担当者につながずに留守番電話やフォーム誘導に回す仕組みを入れると、営業電話への応対時間をほぼゼロにできます。
判定の精度は完璧ではなく、まれに新規の取引提案を営業電話と誤判定してしまうことがあります。
留守番録音を毎日1回は確認する運用にしておけば、取りこぼしのリスクを抑えられるはずです。
新規取引の窓口を広く保ちたい業種では、仕分けを厳しくしすぎないことも判断材料になります。
内訳別・手段の対応表(費用感つき)
内訳ごとにどの手段が効くか、費用感とあわせて整理すると次のようになります。
| 電話の内訳 | 効く手段 | 費用感の目安 |
|---|---|---|
| よくある質問系 | FAQページ | 無料でできる範囲(既存サイトに追加) |
| よくある質問系(応答自動化まで) | チャットボット | 月数千円~数万円 |
| 注文・依頼系 | Webフォームへの置き換え | 無料~月数千円(フォームツール利用時) |
| 一次受け全般 | 自動応答(IVR) | 月数万円~ |
| 営業電話 | 着信時の自動仕分け | 自動応答サービスの一機能として月数万円~に含まれる場合が多い |
| 緊急連絡 | 電話を維持(時間短縮の工夫のみ) | 追加費用なし |
無料でできる範囲から着手し、効果を確認しながら月額ツール、必要であれば代行サービスへと段階を上げていくのが投資を無駄にしない順番です。
最初から代行サービスに丸ごと委託すると月数万円から十数万円の固定費が発生するため、内訳の記録なしに導入すると費用に見合わない結果になりやすい点は注意します。
顧客に失礼にならない移行の進め方
電話を減らす移行で一番警戒すべきなのは、顧客が「対応してもらえなくなった」と感じることです。
電話番号を突然消したり、案内なしに窓口を切り替えたりすると、常連客ほど戸惑いや不満を持ちます。
段階を踏んで、電話という選択肢を残したまま新しい窓口を育てていく進め方が失礼にならない移行のコツです。
Step1. 電話番号は残したまま選択肢を増やす
既存の電話番号は変えず、FAQやフォーム、チャットボットといった新しい窓口を追加するところから始めます。
「電話をかけられなくなる」という不安を最初から取り除いておくことで、顧客側の抵抗感が下がります。
自動応答を導入する場合も、オペレーターにつながる選択肢を残しておけば、これまで通り電話で話したい顧客の体験は損なわれません。
Step2. 案内文で新しい窓口へ誘導する
Webサイトのトップページや請求書、メールの署名など、顧客の目に触れる場所に新しい窓口の案内を加えます。
「よくある質問はこちらからもご確認いただけます」といった一文を添えるだけで、電話をかける前にFAQを見る顧客が少しずつ増えていきます。
自動応答を先に案内してしまうと機械的な印象が先に立つため、まずFAQやフォームを案内し、自動応答は電話がつながった後の選択肢として位置づけると受け入れられやすくなります。
案内を出してすぐに効果が出るとは限らず、定着までに1~2ヶ月ほどかかる想定で見ておくと焦らずに進められます。
Step3. 電話が減ったか月次で確認する
Step1で1週間記録した内訳の数え方をそのまま使い、月に1回、着信件数と内訳の変化を確認します。
狙った分類の着信が減っていなければ、案内の出し方や新しい窓口の使いやすさに問題がある可能性が高く、案内文の位置や文言を見直します。
逆に狙っていない分類(緊急連絡など)まで減っている場合は、必要な電話までかけづらくしてしまっていないか確認が必要です。
電話を残すべき業務
すべての電話を減らせばいいわけではありません。
クレーム対応や事故報告のような緊急連絡は、機械的な一次受けを挟むことでかえって顧客の不安を増幅させるため、電話を維持し、担当者に即つながる体制を優先します。
高額な商談や契約更新の相談のように、声のトーンや間の取り方から相手の意向を読み取る必要がある電話も同様です。
文字のやり取りでは伝わらない機微があり、無理に自動化すると信頼関係を損なうリスクのほうが大きくなります。
たとえば解約を検討している顧客からの電話まで自動応答に回してしまうと、引き止めの機会そのものを失いかねません。
このような電話は、緊急連絡と同じ扱いで最初から人が受ける窓口に分類しておくのが安全です。
内訳の記録で緊急連絡や重要商談の比率が高いとわかった窓口は、減らす対象から外し、対応時間の短縮や録音による記録の効率化に絞って検討するのが現実的です。
電話に限らず、自社のどこから業務自動化に着手すべきか整理したい場合は、次の記事も参考になります。

電話対応を減らす進め方について相談してみませんか?
「電話を減らしたいが何から手をつければいいかわからない」「自動応答を入れて顧客に冷たい印象を与えないか不安」「社内に電話業務を設計できる人材がいない」
少しでもお心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。
現在、電話対応の見直しに関するお悩みをお伺いする 無料の個別相談 を実施しています。
よくある質問
Q. 電話を減らすと顧客満足度は下がりませんか?
内訳を記録せずに一律で減らそうとすると下がるリスクがありますが、よくある質問系や注文・依頼系のように待ち時間そのものが不満の原因になっている電話は、Webやフォームに置き換えたほうがむしろ満足度が保たれます。
営業時間外でも回答が得られる、待たされずに済むという点では、電話よりFAQやチャットボットのほうが優れている場面も少なくありません。
Q. 導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
FAQページの追加であれば無料でできる範囲から始められ、チャットボットや自動応答は月数千円から月数万円が目安です。
費用は着信件数や求める機能の範囲で変わるため、一律の金額は出せません。
内訳の記録結果をもとに、必要な手段から段階的に導入するのが投資を無駄にしない進め方です。
Q. 小規模な会社でも自動応答は導入できますか?
従業員10名程度の会社でも導入している例はあります。
着信件数が少ないうちは、まずFAQやフォームといった無料~低コストの手段から始め、効果を確認してから自動応答の検討に進む順番が安全です。
Q. 内訳の記録は誰が担当すればいいですか?
電話を直接受ける担当者が、着信のたびにメモを取る形が最も実態に近い記録になります。
複数人で電話を受けている場合は、共有のメモ用紙やスプレッドシートを用意し、全員が同じ4分類でチェックできるようにしておくと集計がしやすくなります。
Q. 移行後に電話が減らなかった場合はどうすればいいですか?
案内文の位置や文言を見直すところから着手するのが定石です。
新しい窓口を作っただけでは顧客に気づかれないことが多く、請求書やメール署名など顧客が必ず目にする場所に案内を追加し、月次で内訳を再確認しながら調整します。