プロンプトに応じて回答を生成する「生成AI」の業務利用が定着しつつある一方で、目標に向けて自律的にタスクを実行する「AIエージェント」の導入はまだ黎明期にあります。
IPAが2026年6月に発表した調査によれば、業務AI利用者の約8割(79.5%、n=2,000)が「AIにできること・利用場面の基本知識」を求めており、現場では依然としてAIの基礎的な活用イメージが不足していることが伺えます。
AIエージェントの基本知識として、ChatGPTとの比較やRPAとの違い、具体的な業務での利用場面、導入時のリスク、および2026年6月時点の主要ツールを整理しました。
「AI の基本知識(AI にできること、利用場面等)」について、「きちんと理解したいとき参照する」34.6% +「業務に必要な最小限の範囲で参照する」44.9% = 79.5%(n=2,000、全 11 項目中最多)
出典: IPA「AIの動作・分析・利用等の説明に関する意識調査」
AIエージェントとは?生成AIとの根本的な違い
AIエージェントとは、ユーザーから目標を受け取り、その目標を達成するために自分で計画を立て、ツールを操作し、結果を確認しながら作業を進めるAIシステムです。
ChatGPTに「○○について調べて」と頼めば返ってくるのは回答で、次に何をするかは人間が決めますが、AIエージェントは違います。
「○○についてリサーチして、競合3社と比較してまとめろ」と指示すると、検索、情報収集、比較表の作成、メール文の下書きまでを一連の流れとして自律的に実行します。
AIがツールを操作する仕組みの詳細はFunction Callingの解説記事で整理済みです。

AIエージェントとChatGPTの違いを比較表で整理
指示を受けて返答するか、目的を受けて実行するかという点が核心です。
| 項目 | ChatGPT(会話モード) | AIエージェント |
|---|---|---|
| 入力 | 質問・指示 | 目標・ゴール |
| 動作 | 1回の応答を生成 | 複数ステップを自律実行 |
| ツール利用 | 会話内に限定 | 検索・ファイル操作・API連携など多様 |
| 人間の介在 | 毎回指示を出す | 目標設定後は少ない |
| 出力 | テキストの回答 | ファイル・送信済みメールなどの成果物 |
2025年7月にOpenAIがChatGPTエージェントを正式リリースし、ChatGPT自身もブラウザ操作、スプレッドシート生成、スケジュール管理といったエージェント的な機能を持つようになりました。
ChatGPTとAIエージェントは別物という説明は2026年時点では単純化しすぎで、ChatGPTもエージェント機能を取り込みつつあるという理解が正確です。
生成AIとLLMの用語の違いは別記事で整理しています。

AIエージェントとRPAの違いを比較表で整理
「自動化ツールならRPAと同じでは?」という疑問はよく出ます。
| 項目 | RPA | AIエージェント |
|---|---|---|
| 手順 | 事前に固定 | 目標から自分で生成 |
| 想定外の状況 | あらかじめ対応を決めておく | その場で判断して対処 |
| 業務フロー変更時 | 再設計が必要 | 目標が同じなら自動調整 |
| 向いている業務 | 繰り返しの定型作業 | 判断が伴う複合的な作業 |
RPAはログインしてファイルを開いて値を転記して保存する、という固定フローをミスなく高速でこなすのが強みです。
AIエージェントは途中でエラーが出た、想定外のページが表示されたという状況でも対処できる点で異なります。
AIエージェントの業務活用③つの場面
AIエージェントの活用場面①:リサーチ→要約→送信を自律でこなす
「A社の競合調査レポートを作ってSlackに投稿しておいて」という指示に対して、AIエージェントはWebを検索し、情報を収集し、レポート形式にまとめ、Slackへの投稿まで実行します。
人間がやることは最初の指示だけです。
AIエージェントの活用場面②:コードを書いて、テストして、自分で直す
コーディング支援が最もわかりやすい例です。
「ユーザー一覧をファイルに書き出す機能を追加して」と依頼すると、プログラムを書き、動作確認を実行し、エラーが出れば原因を分析して修正し、問題がなくなるまで繰り返します。
AnthropicのClaude CodeやOpenAIのCodexがこの使い方の代表例です。
実は、このサイト自体もClaude Codeで作っています。
デザインの方向性を伝えると、配色やレイアウトの提案からコードの作成、インターネット上への公開まで一連の流れで進めてくれました。
プログラミングの経験がなくても、Webサイトの設計から公開までAIエージェントと一緒に進められます。
AIエージェントの活用場面③:複数ツールをまたいだ作業を一気に実行
たとえば「Googleカレンダーの今週の予定を確認して、明日の会議資料を過去の議事録から自動生成してNotionに保存する」といった複数サービスにまたがる作業を、1つの指示で完結させられます。
これまでツールを開いてコピーして別ツールに貼るという繰り返し作業にかかっていた時間が消えます。
複数ツールを横断的に接続する標準規格はMCPで解説しています。

AIエージェントのリスク
AIエージェントは行動するAIなので、生成AIとはリスクの種類が違います。
生成AIのリスクは出力の誤りです。
ハルシネーションや偏りのある回答が返ってきても、人間が確認すれば対処できます。
AIエージェントのリスクは、実際のシステムに触ることです。
取り消せない操作を実行する可能性があります。
- メールの誤送信
- ファイルの削除
- 外部サービスへの課金が発生する操作
- データの上書き
これを防ぐために、主要なAIエージェントツールはHuman-in-the-loop(人間の確認ステップ)を設定できる設計になっています。
「ここまで来たら一度確認を取る」という制御ポイントを設けることで、完全な自律実行と安全性のバランスを取れます。
使い始めは読み取りだけのタスクから始めると、リスクを抑えながら動作を把握できます。
AIの業務活用について相談してみませんか?
「生成AIとAIエージェントのどちらが自社の業務に合うか判断できない」「取り消せない操作のリスクにどこまで備えるべきか分からない」「社内にAI活用を設計できる人材がいない」
少しでもお心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。
現在、AIの業務活用に関するお悩みをお伺いする 無料の個別相談 を実施しています。
AIエージェントと生成AIの違いでよくある質問
Q. ChatGPTにエージェント機能があるなら、別のツールは要らない?
単体で完結するタスクなら不要です。
ブラウザ操作やスケジュール管理など、ChatGPT内で閉じる作業はそのまま使えます。
ただし、社内システムへのデータ入力や複数サービスをまたぐワークフローでは、Difyのようなオーケストレーション基盤やMakeのような外部連携ツールと組み合わせる構成が主流です。
Q. AIエージェントにプログラミング知識は必要?
プログラミング知識なしで使えるツールが多いです。
リサーチ、文書整理、メール起草などのタスクなら知識不要で始められます。
プログラムの作成やシステムの操作を伴う場合は、トラブルが起きたときに自分で判断できる程度の技術知識があると安心です。
Q. AIエージェントは何から始めればいい?
まず1つのツールを1週間使い続けることを勧めます。
ChatGPTエージェントなら追加設定なしで試せるタスクがあります。
週次レポートのまとめや、メール返信の下書きなど小さな業務から始めて、どのタスクを任せるかの感覚を掴むのが最短ルートです。
2026年に試せるAIエージェントツール⑤選
汎用型、コーディング特化、ノーコード構築型など、用途ごとに代表的なツールを5つ取り上げます。
各ツールについてX上のユーザーの声も合わせて紹介します。
AIエージェント①:ChatGPTエージェント
OpenAIが2025年7月にリリースした、ChatGPTに組み込まれたエージェント機能です。
ブラウザを自動操作して情報を集め、スプレッドシートを作成し、スケジュール管理まで一連の流れで実行します。
ChatGPT Plus($20/月~)に加入していればすぐに使えます。
X上では「業務時間が1/3になった」「秘書を雇った気分」といった投稿が見られます。
一方で、「完全に丸投げはできない」「何度かやり取りしながら整える作業は発生する」という指摘もあります。
AIエージェントに指示したら自動で完成する、と期待すると実態とずれるので、対話しながら使うツールとして捉えるのが現実的です。
AIエージェント②:Claude Code
Anthropicが提供するコーディング特化のAIエージェントです。
プログラムの作成、ファイル操作、ブラウザ操作を自律的にこなし、エラーが出れば自分で修正して再実行します。
このサイト自体もClaude Codeで構築しています。
詳細は活用場面②で紹介します。
Proプラン($20/月、約3,000円)から利用できます。
ユーザーからは「生産性が数倍になった」「非エンジニアでも日本語の指示だけでアプリが作れた」という声がある一方、「指示の質に強く依存する」「AIが失敗を隠すケースがあり、エラーログの確認は人間がやる必要がある」という報告もあります。
共通して言われるのは「AIに任せきりにしない運用が鍵」という点です。
AIエージェント③:Manus
汎用型のAIエージェントプラットフォームです。
リサーチ、スライド作成、Webサイト構築、デスクトップアプリ開発など、コーディングに限らず幅広いタスクを自律実行します。
ブラウザ操作も可能で、指示を出すだけで情報収集から成果物の作成まで一貫して進めます。
Apple App Store評価は4.7(レビュー3万件超、2026年6月時点)で、「デジタル同僚みたい」「一度指示したら待つだけ」といった声が投稿されています。
ただし、クレジット消費が激しく予測しにくい点と、テキストのズレや要件違反が出やすい点が繰り返し指摘されています。
完成した成果物の最終チェックは人間が行う前提で使うのが安全です。
AIエージェント④:Dify
オープンソースのAIエージェント構築プラットフォームです。
ノーコードでワークフローを組み立てられるため、プログラミングの知識がなくても業務に合わせたAIエージェントを作れます。
自社サーバーでの運用も可能で、データを外部に出したくない企業にも向いています。
無料プランから始められます。
導入事例として、CyberAgentでは社員の約20%(約1,800名)がDifyを利用し、月3,000時間の業務削減を実現しています。
ビジネス職の社員が自らアプリを開発・運用しており、エンジニアに依頼しなくても業務改善を進められる点が評価されています。
一方で、「何をどう自動化するか」の要件定義力が必要で、曖昧な状態で始めると効果が出にくいという声もあります。
出典: CyberAgent Developers Blog「Difyでプロダクト主導で3,000時間/月削減する方法」
AIエージェント⑤:Google Antigravity
Googleが2025年11月にリリースしたエージェントファーストの開発環境です。
2026年5月にv2.0へアップデートされ、複数のAIエージェントを同時に動かして開発タスクを並列処理できるようになりました。
v2.0はスタンドアロンのデスクトップアプリとして刷新されました。
旧バージョン(Antigravity IDE)はVisual Studio Codeベースで別途提供されています。
X上では「複数エージェントを並列に動かせるオーケストレーション感覚が強力」「Chromeを直接操作してデバッグまで自動化できるのが本領」といった投稿が見られます。
ただし、2026年6月時点ではまだパブリックプレビュー中で、動作の不安定さを指摘する声もあります。
プレビュー期間中は無料で利用できるため、試すなら今がチャンスです。