想定ケース
従業員85名の通販会社で、売上・広告・在庫のデータを毎週アシスタント1名が複数のシステムから抽出し、Excelに整形して部門別に配布しているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 通販業・従業員85名 |
| 対象部署 | 経営企画アシスタント(担当1名)・レポートを受け取る各部門 |
| 対象業務 | 週次レポートのデータ抽出・整形・部門別配布 |
お客様の状況と課題
毎週月曜、アシスタントが販売管理・広告管理・在庫管理の3つのシステムからデータをダウンロードし、Excelへ貼り付けて整形するのが現状の運用です。
部門ごとに見たい数字が違うため、営業・商品・物流それぞれの体裁に作り分けて配布しており、この作業で月曜がほぼ1日つぶれます。
しかも、システムのメンテナンスや祝日で作業が火曜にずれると、各部門の週次会議に間に合いません。
資料なしで会議が始まったことも実際にあります。
ミスも起きています。
手作業のコピーと貼り付けのため、参照する週の範囲を間違えたことが過去に何度かありました。
加えて作り方はアシスタント1名の頭の中にしかなく、休暇の週はレポートが出ません。
実現したいこと
- データの抽出・整形・配布までを人手なしで完了させる
- 毎週決まった曜日・時刻に、各部門へレポートが自動で届く状態にする
- 週範囲の指定ミスなど、手作業起因の数字の間違いをなくす
- 担当者が休んでもレポートが止まらないようにする
改修の概要
現状は、アシスタントが3つのシステムから毎週データをダウンロードし、Excelに貼り付けて部門別の体裁に整形し、メールで配布する流れです。
この一連の作業に、毎週ほぼ1日かかっています。
改修後は、Power Automate(Microsoftの自動化サービス)が決まった時刻に各システムからデータを取り込みます。
そのデータを部門別のレポートに整形するのは、Power BI(Microsoftのデータ可視化ツール)の役目です。
毎週月曜の朝、各部門の宛先へ自動でレポートが届きます。
集計の期間指定も自動で行うため、週範囲の取り違えは仕組み上起こりません。
アシスタントの仕事は「作って配る」から「届いた数字を確認する」に変わり、空いた時間を数字の分析やイレギュラーの調査に充てられます。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 各部門が受け取る部分 | メール添付またはTeamsへの自動投稿 | 受け取り側の習慣を変えない。今まで通りの曜日・時刻に届く |
| レポートの整形 | Power BI | 部門別の見せ方をテンプレート化。一度作れば毎週同じ品質で自動生成される |
| 裏側の処理(抽出・配布) | Power Automate | 各システムからのデータ取り込みと、時刻指定の自動配布。会社ですでに使っているMicrosoft環境に追加費用少なく載せられる |
| データの置き場 | SharePoint(Microsoftのファイル共有機能) | 過去のレポートが自動で蓄積され、後から週をさかのぼって見返せる |
効果試算
前提: 人件費単価2,500円/時で、事務職の職種別単価・福利厚生込み概算・推定です。
週1回×年52週、現状の作業を1回7時間と想定します。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 1回あたり所要時間 | 約7時間(抽出・整形・配布) | 約1時間(届いた数字の確認と例外対応) |
| 頻度 | 週1回(年52回) | 同じ |
| 対応人数 | 1名 | 1名 |
| 年間工数 | 約364時間 | 約52時間 |
| 年間人件費換算 | 約91万円 | 約13万円 |
年間削減効果は約78万円(約312時間)と試算しています。
金額に出ない効果: 週次会議への遅延ゼロ・手作業ミスの構造的防止・担当者不在でもレポートが止まらない体制
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. 既存Microsoft契約内で構成 | 月0~数千円(現契約のプランに含まれる範囲で構成) | Microsoft 365をすでに全社利用している |
| B. Power BIの有償プランを追加 | 月数千円~2万円程度(閲覧者数に応じたライセンス料) | 部門の多数のメンバーが画面上で対話的に数字を見たい |
配布されたレポートを読むだけならAで始められます。
受け取り側が自分で期間や部門を切り替えて見たくなった段階でBへ広げるのが無理のない順序です。
構築費用は接続するシステムの数とレポートの種類数によって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 売上データの共有範囲 | 全社の数字が配布先全員に見える状態になりうる | 部門別レポートに載せる項目を設計段階で部門長と確定し、宛先リストの管理者を決める |
| 元システムの仕様変更 | データの出力形式が変更されると自動処理が止まる | 取り込み失敗時は担当者へ自動通知し、その週は手動運用に切り替えられる手順書を用意 |
| 数字の誤配信 | 自動化により、間違った数字も自動で配られてしまう | 前週比が異常に大きい場合は配信前に担当者確認を挟む仕組みを入れる |
| 形骸化 | 自動で届くと誰も読まなくなる | 各部門の週次会議の冒頭でレポートを開く運用をセットで決める |
| 構築者の退職で保守不能 | 内製型の典型的な死に方 | 構成図・接続設定・改修手順のドキュメントを納品物に含める |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計2~2.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、接続するシステムの数とデータの取り出しやすさによって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約2週間)
現行のレポートと元データを拝見し、部門ごとに本当に見ている項目を絞り込む。
Step2. 構築(約3週間)
データの取り込み・整形・配布を構築し、過去データで数字が現行レポートと一致することを検証する。
Step3. 並行運用(約1ヶ月=4週分)
手作業のレポートと自動レポートを毎週並行して作り、数字の一致と配信時刻を確かめる期間である。
Step4. 本稼働
4週連続で一致すれば手作業を止め、以後の項目追加は改修として対応する。
お客様にお願いすることは、各システムのデータ出力権限のご用意、並行運用期間中の数字の突き合わせ、アシスタントの方との週1回・30分程度の打ち合わせの3点です。
業務を止める切り替え作業はありません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- 毎週・毎月の定型レポート作成に半日以上かかっている
- レポートの体裁と項目がほぼ固定で、数字だけが毎回変わる
- Microsoft 365を全社で利用している
逆に、レポートの中身が毎回変わる分析資料は、自動化しても作り直しが続くため向いていません。
元データがシステムから取り出せず紙やFAXでしか存在しない場合は、先にデータ化の仕組みから整える必要があります。