想定ケース
従業員65名の雑貨卸で、倉庫2拠点の月次棚卸を紙のリストで実施し、事務所でExcelへ転記・差異確認しているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 雑貨卸・従業員65名・倉庫2拠点 |
| 対象部署 | 倉庫(棚卸実施6名)・倉庫事務 |
| 対象業務 | 月次棚卸の数量記録・転記・差異確認 |
お客様の状況と課題
毎月末、倉庫2拠点で棚卸を実施しています。
倉庫スタッフ6名が紙のリストを持って棚を回り、数量を手書きで記録する方式です。
棚卸日は6名が半日がかりで、その間は出荷作業が止まります。
記録のあとに待っているのが、倉庫事務の担当者による転記です。
紙のリストをExcelへ転記し、帳簿上の在庫(理論在庫)と突き合わせて差異を確認する作業で、毎回2日程度かかります。
差異の原因調査は転記が終わってからになるため、棚卸から数日たって「数が合わない」と分かるのが実情です。
その頃には現場の記憶が薄れていて、原因を追えないことが少なくありません。
加えて、手書きの数字の読み間違いや転記ミスで、実際には合っていた品目を調べ直すムダも起きています。
実現したいこと
- 紙のリストへの手書きと、そのExcel転記をなくす
- 数量を入力したそばから集計され、差異がその場で見える状態にする
- 差異の大きい品目から優先的に、棚卸当日のうちに確認できるようにする
- 2拠点の進捗と結果を事務所から一覧できるようにする
改修の概要
現状は、倉庫スタッフが紙のリストに数量を手書きし、後日その紙を見ながら事務担当がExcelへ転記して、理論在庫との差異を1品目ずつ確認する流れです。
棚卸から差異判明までに、数日の時差がある構造です。
改修後は、倉庫スタッフがスマホのフォーム(入力用の画面)から品目を選んで数量を直接入力すると、その数字が即時にスプレッドシートへ集計され、理論在庫との差異が自動で一覧になります。
差異の大きい品目が上に並ぶため、棚卸のその日のうちに、現場の記憶が新しい状態で数え直しと原因確認ができます。
紙とペンをスマホに持ち替えるだけで、転記という工程そのものがなくなる改修です。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 現場の人が触る部分 | スマホの入力フォーム | 棚番と品目を選んで数量を打つだけ。手袋のままでも操作しやすい大きなボタン設計 |
| 台帳・集計 | Googleスプレッドシート | 入力と同時に集計。理論在庫との差異を自動計算し、差異の大きい順に並べ替え |
| 裏側の処理 | スプレッドシートの計算式と簡単な自動化 | 理論在庫データの取り込みと、拠点別の進捗表示。専用システムを新たに買わない |
効果試算
前提: 人件費単価2,000円/時で、倉庫スタッフ・倉庫事務とも現場作業の職種別単価・福利厚生込み概算・推定です。
月1回×2拠点、年12回の棚卸を想定します。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 棚卸の実施(数える・記録) | 6名×約4時間 | 6名×約2.5時間(入力込み) |
| 転記・差異確認 | 担当1名×約2日(16時間) | 差異上位の確認のみ約2時間 |
| 1回あたり工数 | 約40時間 | 約17時間 |
| 年間工数 | 約480時間 | 約204時間 |
| 年間人件費換算 | 約96万円 | 約41万円 |
年間削減効果は約55万円(約276時間)と試算しています。
差異原因の調査時間は含めていません。
金額に出ない効果: 棚卸当日中の差異確認による原因究明率の向上・出荷停止時間の短縮・読み間違いによる調べ直しの解消
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. スマホフォーム+スプレッドシート | 月0~数千円(既存のGoogle環境内でほぼ完結) | 品目数が数千点まで。コスト最優先 |
| B. 在庫管理の専用サービス型 | 月2~5万円(拠点数・ユーザー数に応じた利用料) | バーコード検品や入出荷管理まで一体で刷新したい |
月次棚卸の改善だけが目的ならAで十分です。
日々の入出荷管理まで課題がある場合は、最初からBを検討した方が二度手間になりません。
構築費用は品目数と既存の在庫データの状態によって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 在庫データの共有範囲 | 全品目の在庫と差異が誰でも見える状態になる | 閲覧・編集の権限を役割別に設定し、仕入原価などの項目は現場の画面に出さない |
| 入力ミス(桁違い・品目違い) | 手書きが入力ミスに置き換わるだけになる | 前回数量と大きく違う入力には警告を表示。棚番と品目の選択式で打ち間違いを防ぐ |
| 二重カウント・数え漏れ | 誰がどの棚を担当したか曖昧になる | 棚ごとの担当割りをフォーム上で管理し、未入力の棚を一覧で表示 |
| 理論在庫データが古い | 突き合わせの元データが不正確だと差異一覧が意味を持たない | 棚卸直前に基幹システムから在庫データを取り込む手順を固定化する |
| 構築者の退職で保守不能 | 内製型の典型的な死に方 | 構成図・設定値・改修手順のドキュメントを納品物に含める |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計2~2.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、品目数と理論在庫データの整備状況によって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約2週間)
現行の棚卸リスト・Excel台帳・理論在庫の出どころを拝見し、品目の分類と棚番のルールを整理する。
Step2. 構築(約2~3週間)
入力フォームと集計・差異一覧を構築し、実際の品目データで動作を確認する。
Step3. 並行運用(1棚卸サイクル=約1ヶ月)
1拠点の一部エリアでスマホ入力を試し、紙のリストと並行して同じ棚を記録する。
結果を突き合わせて、入力のしやすさと精度を確かめるのが狙いである。
Step4. 本稼働
問題がなければ2拠点全体へ広げ、紙のリストを廃止する。
お客様にお願いすることは、品目マスタと理論在庫データのご提供、並行運用時の突き合わせ確認、倉庫責任者との週1回・30分程度の打ち合わせの3点です。
棚卸を止める切り替え作業はありません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- 定期的な棚卸を紙のリストで実施していて、転記に半日以上かかっている
- 品目にコードや棚番のルールがあり、リストがデータで存在する
- 現場にスマホまたはタブレットを持ち込める
逆に、品目が数百点以下で棚卸が1~2時間で終わる規模なら、紙のままでも大きな差は出ません。
品目マスタが整備されておらず「何がどこにあるか」が人の頭の中にしかない場合は、先にマスタ整備から着手する必要があります。