想定ケース
ここでは、従業員22名の塗装工事業で、現場写真の整理と報告書作成に事務担当が案件ごとに2~3時間かけているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 塗装工事業・従業員22名 |
| 対象部署 | 事務(報告書作成担当1名)・現場職人 |
| 対象業務 | 現場写真の整理~施主・元請への工事報告書作成 |
お客様の状況と課題
職人は現場で施工前・施工中・完了の写真をスマホで撮りためていますが、各自のスマホやチャットに散らばったままで、どの案件のどの工程の写真かは本人にしかわかりません。
工事完了のたびに、施主や元請へ提出する報告書を事務担当が作成しており、完工は月8件ほど。
報告書1件の作成には2~3時間かかり、その大半を、職人から写真を集めて案件・工程ごとに選別する作業と、工程説明の文章をゼロから書く作業が占めます。
職人側も、依頼されてから写真を探して送るのに1案件あたり30分ほど使っています。
その結果、報告書の提出が完工から1~2週間遅れることがあり、元請からの評価にも入金サイクルにも響いてしまう状態です。
実現したいこと
- 写真が撮った時点で案件・工程ごとに自動で整理される状態にする
- 報告書の文章をゼロから書かず、たたき台の確認・手直しだけで済むようにする
- 完工から数日以内に報告書を提出できるようにする
- 職人の「写真を探して送る」作業をなくす
改修の概要
現状は、職人が各自のスマホに写真をためており、完工後に事務担当が職人へ依頼して写真を集め、案件・工程ごとに選別してから、工程説明の文章を書いて報告書に仕上げています。
この写真集めと文章作成にかかる時間が、1件2~3時間です。
改修後は、職人が現場でスマホから専用の窓口(案件ごとのチャットまたは送信フォーム)に写真を送ると、案件フォルダへ自動で振り分けられ、撮影日時つきで一覧に整理されます。
工事が完了すると、生成AI(写真や文章を読み取り、文章を作れるAI)が整理された写真をもとに、工程ごとの説明文の下書きを添えた報告書のたたき台を自動で作る流れです。
事務担当の仕事は、たたき台の写真の並びと説明文を確認・手直しして仕上げることだけになり、1件約40分で済みます。
写真の整理を「あとでまとめてやる作業」から「送った瞬間に終わっている状態」に変える改修です。
整理とたたき台作成は自動化し、施主・元請に出す文面の最終判断だけを人に残します。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 現場の人が触る部分 | スマホからの写真送信(案件ごとのチャットまたは送信フォーム) | 職人は「撮って送る」だけ。新しいアプリの操作を覚えさせない |
| 写真の置き場 | クラウドの共有フォルダ+スプレッドシートの案件一覧 | 案件・工程ごとに自動振り分け。事務所からも現場からも同じものが見える |
| 裏側の処理(整理) | 自動化ツール(Google Apps Script: Googleのスプレッドシートやフォルダに付属する自動化機能) | 送信された写真を案件フォルダへ振り分け、撮影日時つきで一覧化 |
| 裏側の処理(たたき台生成) | 生成AI | 写真と案件情報(工事名・工期・工程)から、工程説明の下書きつき報告書のたたき台を生成 |
| 報告書の仕上げ | 既存の報告書テンプレート(WordまたはGoogleドキュメント) | 提出先ごとの様式は変えない。たたき台を流し込む形にする |
効果試算
前提: 人件費単価は作業別に使い分けており、報告書作成は2,500円/時(事務職)、写真の収集・整理は2,000円/時(現場作業職)です。
いずれも職種別単価・福利厚生込み概算・推定です。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 報告書作成(事務) | 1件約2.5時間 | 1件約40分(確認・手直しのみ) |
| 写真の収集・整理(職人) | 1件約30分 | ほぼゼロ(撮って送るだけ) |
| 対応件数 | 月8件(年96件) | 同じ |
| 年間工数 | 事務 約240時間+職人 約48時間 | 事務 約64時間+職人 ほぼゼロ |
| 年間人件費換算 | 約69.6万円 | 約16万円 |
年間削減効果は約53.6万円(約224時間)と試算しており、完工件数と報告書の様式によって変動します。
このほか金額に出ない効果もあります。
報告書提出の早期化による元請からの評価向上と入金サイクルの改善、写真が会社の資産として残ること(担当者のスマホ機種変更で消えない)、そして営業時に過去の施工写真をすぐ見せられることです。
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. Google環境の内製型 | 月数千円(AIの処理量に応じた従量制+クラウド保存容量) | コストを抑えたい。既存の報告書様式を維持したい |
| B. 施工管理アプリ型 | 月2~5万円(利用人数に依存) | 写真整理だけでなく工程表・日報までまとめて管理したい |
月8件・22名の規模ならAで十分成立します。
ただ、将来的に工程管理や日報までまとめてデジタル化する構想があるなら、Bが候補です。
構築費用は報告書の様式数や既存環境によって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| AIの説明文の誤り | 工程名・使用塗料をAIが取り違えることがある | たたき台は必ず事務担当が確認・手直ししてから提出する運用に固定。案件情報(塗料・工程)は職人の入力ではなく案件一覧から渡す |
| 施主情報の外部送信 | 住所が写り込んだ写真や施主名をAIに渡す | 入力内容を学習に使わない設定(学習利用オフ)のサービス・プランを選定し、契約条件を導入時に文書化 |
| 職人が写真を送らず形骸化 | 送信が面倒だと従来のスマホ保存に戻る | 操作を「撮って送る」の2手順に限定。並行運用期間に職人の声を聞いて送信方法を調整する |
| 誤った案件への振り分け | 送信先の選び間違い | 案件一覧で写真の枚数を見える化し、少なすぎる案件を週次で点検。振り分けの修正は一覧上で簡単にできる形にする |
| 構築者の退職で保守不能 | 内製型の典型的な死に方 | 構成図・設定値・改修手順のドキュメントを納品物に含める |
導入の進め方と期間の目安
標準的には、ヒアリング、構築、並行運用、本稼働の4ステップで、合計1.5~2ヶ月が目安です。
期間は推定で、報告書の様式数によって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約2週間)
現行の報告書サンプルと写真の管理状況を拝見し、提出先ごとの様式と必要な工程写真の種類を整理する。
Step2. 構築(約2~3週間)
写真の送信窓口・自動整理・たたき台生成を組み上げ、過去案件の写真でたたき台の品質を検証する。
Step3. 並行運用(約1ヶ月)
現場2~3件で職人に実際に使ってもらい、従来のやり方と並行して報告書を作って品質と手間を比較する。
Step4. 本稼働
問題がなければ全案件へ広げる。
以後の様式追加はテンプレートの追加だけで対応できる。
お客様にお願いすることは、過去の報告書と写真サンプルのご提供、並行運用に協力いただく現場の選定、事務ご担当者との週1回・30分程度の打ち合わせの3点です。
業務を止める切り替え作業はありません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- 施主・元請への写真つき報告書の提出が受注条件になっており、月5件以上の完工がある
- 職人が業務でスマホを使うことに抵抗がない
- 報告書の様式がある程度決まっている(提出先ごとの様式が数種類に収まる)
逆に、報告書の提出が月2~3件以下であれば手作業の方が安く済むため、導入をおすすめしません。
元請ごとに様式がばらばらで毎回ゼロから作っている場合は、先に様式の整理から始めることになります。