想定ケース
ここでは、従業員30名の金属加工業で見積書の作成が社長と工場長の2名にしかできないケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 金属加工業・従業員30名 |
| 対象部署 | 経営層・工場管理(社長・工場長の2名) |
| 対象業務 | 見積依頼の受付~見積書の作成・発行~履歴管理 |
お客様の状況と課題
見積書を作れるのは社長と工場長の2名だけで、単価の感覚は2人の頭の中にしかありません。
見積の元になるExcelファイルも2人がそれぞれ自分用に育ててきたもので、同じ仕様でも作る人によって単価が違ってくることがあります。
見積依頼は月40件ほどあり、1件あたり過去ファイルを探して単価を確認しながら作るため、約40分かかる計算です。
ただ、2人とも現場や商談で忙しく、見積が2~3日待ちになって受注機会を逃すこともあります。
過去にいくらで出したかもファイルの山に埋もれており、再見積のたびに探し直しているのが実情です。
実現したいこと
- 仕様を入力すれば見積書がその場で出る状態にし、見積待ちをなくす
- 単価の基準を1つのマスタに集約し、誰が作っても同じ単価になるようにする
- 過去の見積をすべて台帳に残し、再見積や価格改定の判断材料にする
- 将来的には営業事務でも一次見積を出せる体制への足がかりにする
改修の概要
現状は、見積依頼が来ると社長か工場長が過去のExcelファイルを探し、似た案件の単価を確認しながら新しい見積書を作っています。
単価の判断基準が共有されていないため、2人の間でも金額に差が出ることがあります。
改修後は、仕様(材質・寸法・数量・納期)を入力フォームに入れると、単価マスタ(材質や加工内容ごとの単価を1箇所にまとめた一覧表)を参照して金額が計算され、見積書のPDFが自動で生成される仕組みです。
作成した見積は案件名・仕様・金額・作成日とともに台帳へ自動で記録されるため、過去にいくらで出したかがすぐ引けます。
その結果、社長・工場長の仕事は特殊案件の単価判断とマスタの見直しに絞られます。
属人化した頭の中の単価表を、会社の資産に変える改修です。
計算と書類作成は自動化し、価格の最終判断だけを人に残します。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 現場の人が触る部分 | 入力フォーム(Googleフォームまたはスプレッドシート上の入力欄) | 材質・寸法・数量・納期を選んで入れるだけ。Excelに慣れた人ならそのまま使える |
| 単価の管理 | Googleスプレッドシートの単価マスタ | 単価の基準を1箇所に集約。価格改定はマスタの更新だけで全見積に反映される |
| 裏側の処理(計算・帳票) | Google Apps Script(スプレッドシート付属の自動化機能) | マスタ参照・金額計算・見積書PDFの生成・台帳への記録までを一気通貫で自動化 |
| 履歴の保管 | スプレッドシートの見積台帳 | 過去見積を案件名・仕様・金額で検索できる。再見積・価格改定の判断材料になる |
効果試算
前提: 人件費単価3,500円/時(管理職の職種別単価・福利厚生込み概算・推定。
社長・工場長の時間として適用)
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 1件あたり所要時間 | 約40分 | 約10分(仕様入力と金額確認) |
| 対応件数 | 月40件(年480件) | 同じ |
| 対応人数 | 2名 | 2名 |
| 月間工数 | 約27時間 | 約7時間 |
| 年間人件費換算 | 約112万円 | 約28万円 |
年間削減効果は約84万円(約240時間)と試算しています。
金額には出ませんが、見積回答が即日になって受注機会を逃さなくなること、単価のバラつきの解消、社長と工場長にしかできない仕事に時間を集中できることも効果です。
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. スプレッドシート+Google Apps Script内製型 | 月0円~数千円(Google Workspaceの利用料内) | 見積の型が決まっている。運用コストを抑えたい |
| B. 見積専用クラウドサービス型 | 月数千円~数万円(サービス利用料) | 承認フローや販売管理との連携まで求める |
月40件規模ならAで十分に回ります。
構築費用は見積の型の数や単価体系の複雑さによって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 単価マスタの陳腐化 | 材料費の変動がマスタに反映されず、古い単価で見積が出る | マスタに最終更新日を持たせ、四半期ごとの見直しを運用ルールに組み込む |
| 特殊案件の誤見積 | マスタにない特注仕様を無理に自動計算して金額を誤る | マスタ外の仕様は「要個別判断」として自動計算を止め、社長・工場長の判断に回す |
| マスタ更新の属人化 | 単価を直せる人が結局1人に固定される | 更新手順を文書化し、更新履歴(誰がいつ何を変えたか)を台帳に自動記録する |
| 構築者の退職で保守不能 | 内製型の典型的な死に方 | 構成図・設定値・改修手順のドキュメントを納品物に含める |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計2~2.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、単価体系の複雑さによって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約2~3週間)
過去の見積ファイルを拝見する。
社長・工場長それぞれの単価の決め方を聞き取って単価マスタの形に整理する。
ここが本改修の中心作業となる。
Step2. 構築(約2~3週間)
入力フォーム・計算・見積書PDF・台帳を構築する。
過去の実案件の仕様を入れて金額が実績と合うかを検証する。
Step3. 並行運用(約1ヶ月)
実際の見積依頼に対して従来のやり方と自動作成を並行で行う。
金額の差異を1件ずつ確認する。
Step4. 本稼働
並行運用で金額が安定したら切り替える。
特注仕様は以後も個別判断で扱う。
お客様にお願いすることは、過去の見積ファイルのご提供、単価の決め方のヒアリングへのご協力(社長・工場長それぞれ数回)、並行運用期間中の金額突き合わせの3点です。
業務を止める切り替え作業はありません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- 見積依頼が月20件以上あり、作れる人が1~2名に限られている
- 見積の大半が定型的な仕様の組み合わせで決まる
- 単価の決め方を言葉にする作業に経営層が時間を割ける
逆に、月数件しか見積がない場合は手作業のままで十分です。
案件ごとに完全一品ものの設計を伴い、単価が毎回の個別判断になる業態も、マスタ化の効果が薄いため向いていません。