想定ケース
ここでは、従業員180名・12店舗の飲食チェーンで本部経理が毎月手作業で売上を統合集計しているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 飲食チェーン・従業員180名・12店舗 |
| 対象部署 | 本部経理(担当2名)+各店舗の店長 |
| 対象業務 | 店舗別日次売上報告の統合・月次売上集計・経営報告 |
お客様の状況と課題
各店舗は別々のExcelファイルで日次売上を報告しており、店舗ごとにファイルの形が微妙に違って、列の並びや項目名がそろっていません。
月次締めの後、本部経理2名が12店舗分のファイルを開いて1つのExcelに貼り合わせ、集計表と経営報告資料を作っています。
この統合・集計・資料作成にかかるのが2名で月約20時間、締めから経営会議への報告までは1週間。
報告が翌月中旬になるため、不採算メニューへの手当てやキャンペーン判断が1ヶ月近く遅れてしまいます。
しかも店舗側の入力ミス(桁違い・記入漏れ)は貼り合わせの段階で初めて見つかるため、店舗への確認往復でさらに日数が延びます。
実現したいこと
- 店舗の報告フォーマットを統一し、提出と同時に自動で統合される状態にする
- 月次の売上集計と経営報告用レポートを自動で生成する
- 締めから報告までを1週間から数日に短縮する
- 入力ミスを提出の時点で検知し、月末にまとめて発覚する事態をなくす
改修の概要
現状は、12店舗がそれぞれの形式のExcelで日次売上を報告し、本部経理が月次締めの後にそれらを1つのファイルへ手作業で貼り合わせる運用です。
形式がそろっていないため貼り合わせのたびに列の読み替えが必要で、集計と資料作成まで含めると報告完了は締めから1週間後になります。
改修後は、まず全店舗の報告フォーマットを1つの型に統一します。
店舗が所定のフォルダにファイルを保存すると、Power Automate(Microsoftの自動化サービス)が提出を検知する仕組みです。
そこからPower Query(Excelに付属するデータ整形機能)が12店舗分を自動で統合し、月次の売上集計表と店舗別・カテゴリ別のレポートまで統合データから自動で生成されます。
桁違いや記入漏れも提出の時点で自動チェックがかかり、店舗の店長へ即時に差し戻し通知が届く流れです。
本部経理の仕事は、貼り合わせて集計することから、自動集計の結果を確認して報告することに変わります。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 店舗の人が触る部分 | 統一フォーマットのExcel報告ファイル | 店舗の操作は今まで通りExcel入力のまま。新しいツールを覚えさせない |
| 提出の受け口 | SharePoint(Microsoftのファイル共有サービス)の店舗別フォルダ | どの店舗が提出済みかがフォルダを見れば分かる。提出をPower Automateが検知する起点になる |
| 裏側の処理(統合・整形) | Power Query | 12店舗分のファイル結合と表記の整形をExcelの機能だけで実現。専用システムを買わずに済む |
| 裏側の処理(検知・通知) | Power Automate | 提出検知・入力チェック・店長への差し戻し通知・月次レポートの自動送付 |
| 経営報告 | 自動生成の月次レポート(Excel) | 経営会議で使い慣れた表形式を踏襲。見た目を変えずに作成だけを自動化する |
効果試算
前提: 人件費単価2,500円/時(事務・経理職の職種別単価・福利厚生込み概算・推定)
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 統合・集計・資料作成 | 月約20時間(2名合計) | 月約3時間(確認と報告のみ) |
| 頻度 | 月1回(年12回) | 同じ |
| 対応人数 | 2名 | 2名 |
| 年間工数 | 約240時間 | 約36時間 |
| 年間人件費換算 | 約60万円 | 約9万円 |
年間削減効果は約51万円(約204時間)と試算しています。
金額に出ない効果: 締めから報告までの期間短縮(1週間から2~3日へ・推定)による経営判断の前倒し・入力ミスの早期検知・繁忙期でも報告日程がぶれない安定性
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. Microsoft 365内で完結する型(本ケースの構成) | 既存のMicrosoft 365利用料の範囲内(追加ほぼなし) | 全社でMicrosoft 365を契約済みの場合。追加費用を最小にしたい |
| B. BIツール併用型(BIツール: データをグラフや表で見える化する分析ソフト) | 月1~3万円程度(ライセンス料) | 日次で売上推移を眺めたい。店舗比較をグラフで共有したい |
月次報告の自動化だけならAで完結します。
構築費用は店舗数と報告項目の複雑さによって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| フォーマット統一が定着しない | 店舗が列を追加・改変すると自動統合が壊れる | 入力セル以外を編集できないよう保護をかける。改変を検知したら統合を止めて通知する |
| 提出遅れで集計が締まらない | 1店舗の未提出で月次全体が止まる | 提出期限前の自動リマインドと、未提出店舗の一覧を本部へ自動通知。締め切り後は未提出分を空欄のまま暫定集計できるようにする |
| 集計ロジックのブラックボックス化 | 自動化の中身を誰も説明できなくなる | 集計ルール(値引きの扱い・税区分等)を仕様書として文書化し、経理担当が読める形で納品する |
| 売上データの閲覧範囲 | 全店舗の売上が見える場所に集まる | 店舗フォルダは自店舗のみ、統合データは本部と経営層のみに権限を絞る |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計2~2.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、店舗数と報告項目の統一しやすさによって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約2週間)
12店舗の現行報告ファイルをすべて拝見し、項目の共通部分と店舗独自部分を仕分けして統一フォーマット案を作る。
Step2. 構築(約3週間)
統一フォーマット・自動統合・入力チェック・月次レポート生成を構築し、過去数ヶ月分の実データで集計結果を検証する。
Step3. 並行運用(1ヶ月=1締めサイクル)
全店舗が新フォーマットで提出しつつ、従来の手作業集計も並行して行い、両者の集計結果が一致することを確認する。
Step4. 本稼働
数値の一致を確認できたら手作業側を止める。
以後のフォーマット変更は本部経理の承認制で運用する。
お客様にお願いすることは、過去の報告ファイルのご提供、店舗への新フォーマット周知、並行運用期間中の結果突き合わせの3点です。
店舗側の負担は決まった型に入力することだけで、新しいツールの習得は要りません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- 複数店舗・複数部門からExcelで報告を集めており、統合が毎月の手作業になっている
- 全社でMicrosoft 365を契約済み、またはExcel中心の業務環境である
- 報告項目が店舗間でおおむね共通している
逆に、店舗が3店舗以下で統合が月1~2時間で終わる規模なら、手作業のままで足ります。
POSレジ(販売時点で売上を記録するレジシステム)が既に本部集計機能を持っている場合は、Excel報告自体をやめてPOS側の機能を使う方が先です。