想定ケース
ここでは、従業員45名のITサービス業で自社サイトの資料請求・問い合わせを営業アシスタントが手作業で顧客管理システムへ転記しているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | ITサービス業・従業員45名 |
| 対象部署 | 営業アシスタント(2名)と営業 |
| 対象業務 | フォーム経由の資料請求・問い合わせの受付~顧客管理システム登録~担当割り当て |
お客様の状況と課題
自社サイトの資料請求・問い合わせフォームの内容は通知メールで届き、営業アシスタントがCRM(顧客管理システム。
見込み客や商談の情報を一元管理する仕組み)へ1件ずつ手作業で転記しています。
転記は1件あたり約7分。
会社名、氏名、連絡先、問い合わせ内容のコピーと貼り付けの繰り返しです。
展示会後やキャンペーン月は件数が月300件を超え、転記が翌日に回ることも珍しくありません。
転記が遅れると営業の初動連絡も遅れ、見込み客の熱が冷めて商談化率が下がります。
しかも誰に割り振るかの判断もアシスタント経由のため、担当者が動き出すまでにさらに時間がかかっているのが実情です。
実現したいこと
- フォームが送信されたら、人手を介さず顧客管理システムに登録される状態にする
- 担当の割り当てと担当者への通知まで自動化し、初動を当日中にする
- 転記ミス(連絡先の写し間違い等)をなくす
- 営業アシスタントの時間を転記から顧客フォローの支援に振り向ける
改修の概要
現状は、フォームからの資料請求が通知メールで届き、営業アシスタントがメールを開いて内容を確認し、顧客管理システムへ手作業で転記したあと、担当営業を決めて連絡しています。
件数が多い月はこの流れが渋滞し、初動が翌日以降にずれ込みがちです。
改修後は、フォームの送信をトリガー(自動処理を始めるきっかけ)として、送信内容がそのまま顧客管理システムへ自動登録されます。
担当営業の割り当ても、あらかじめ決めたルール(地域・製品・問い合わせ種別)に沿って本人への通知まで自動で進む設計です。
その結果、営業アシスタントの仕事は、内容が不明瞭な例外案件の確認と、登録後の顧客フォロー支援に変わります。
見込み客への初動時間を翌日から数分後に変える改修で、転記と振り分けを自動化し、判断が必要な例外だけを人に残す形です。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 受付の入口 | 自社サイトの既存フォーム | フォーム自体は作り変えない。見込み客側の体験は変わらない |
| 裏側の処理(登録・振り分け) | Power Automate(Microsoftの自動化サービス) | フォーム送信を起点に、顧客管理システムへの登録・担当割り当て・通知までを一つの流れで自動化 |
| 裏側の処理(代替手段) | RPA(パソコン操作を人の代わりに自動で再現するツール) | 顧客管理システムが外部からのデータ受け渡しに対応していない場合に、画面操作の再現で登録する |
| 担当者への通知 | Teamsまたはメールへの自動通知 | 担当営業が普段見ている画面に届く。初動の着手が早くなる |
効果試算
前提: 人件費単価2,500円/時(事務職の職種別単価・福利厚生込み概算・推定)
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 1件あたり所要時間 | 約7分 | 約2分(例外案件の確認のみ) |
| 対応件数 | 月300件(年3,600件) | 同じ |
| 対応人数 | 2名 | 2名 |
| 月間工数 | 約35時間 | 約10時間 |
| 年間人件費換算 | 約105万円 | 約30万円 |
年間削減効果は約75万円(約300時間)と試算しています。
金額に出ない効果: 初動連絡の当日化による商談化率の改善・転記ミスの構造的防止・繁忙月の残業解消
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. Power Automate型 | 月数千円程度(利用プラン料。Microsoft 365契約によっては追加費用が小さい) | 顧客管理システムが外部からのデータ受け渡しに対応している |
| B. RPA併用型 | 月数万円程度(RPAツールのライセンス料) | 顧客管理システムが古く、画面操作でしか登録できない |
まずAで実現できるかを確認し、できない場合にBを検討する順番が費用面で有利です。
構築費用はフォームの項目数や割り当てルールの複雑さによって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 個人情報の取り扱い | 見込み客の氏名・連絡先が自動処理の経路を流れる | 経路上のアクセス権限を必要最小限に絞り、処理の記録(いつ・何件流れたか)を残す |
| フォーム変更で流れが停止 | フォームの項目追加・変更で自動登録が止まり、気づかず放置される | エラー時にアシスタントへ即通知する仕組みを組み込み、フォーム変更時は連携確認をセットにする |
| 誤った自動登録 | 項目の対応付けミスで別欄に登録され、営業が誤った情報で連絡する | 導入時に全項目の突き合わせ検証を行い、稼働後も週次で登録内容を抜き取り確認する |
| 通知過多による無視 | 担当者への通知が多すぎて読まれなくなる | 通知は割り当てられた本人だけに絞り、全体向けには日次まとめ1通に集約する |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計1~1.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、顧客管理システムの仕様によって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約1~2週間)
フォームの項目と顧客管理システムの登録項目、担当割り当てのルールを洗い出し、対応付けを確定する。
Step2. 構築(約1~2週間)
自動登録・割り当て・通知の流れを組み、テスト送信で全項目が正しく登録されるかを検証する。
Step3. 並行運用(約2~4週間)
自動登録と従来の手作業を並行して動かし、実際の問い合わせで登録内容を1件ずつ突き合わせる。
Step4. 本稼働
並行運用で問題がなければ手作業を止める。
例外案件の確認は以後もアシスタントが行う。
お客様にお願いすることは、顧客管理システムの仕様確認へのご協力、担当割り当てルールの言語化、並行運用期間中の突き合わせ確認の3点です。
フォームやサイトを止める作業はありません。
この構成が向く会社・向かない会社
この構成が効果を出しやすいのは、次のような会社です。
- フォーム経由の問い合わせが月100件以上あり、転記が専任級の作業になっている
- 初動の速さが商談化率に直結する商材を扱っている
- 担当割り当てのルールを言葉で説明できる
逆に、問い合わせが月20件以下であれば手作業のままで十分です。
割り当てが毎回の個別判断(案件内容を読んでの采配)になる場合は、登録の自動化までに留め、割り当ては人に残す構成になります。