想定ケース
ここでは、従業員15名の建設会社で、現場担当者が直行直帰のため経費精算の紙が週に一度しか事務所に集まらず、承認が滞留しているケースを想定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 建設業・従業員15名 |
| 対象部署 | 現場担当10名・経理1名(総務兼任)・社長 |
| 対象業務 | 経費精算・資材購入の申請から承認・経理処理まで |
お客様の状況と課題
現場担当10名は直行直帰が基本で、事務所に立ち寄るのは週1回だけです。
経費精算・資材購入の申請は紙のため、現場から事務所へ紙が届き、社長が承認し、経理が処理するまで、1件の完了に平均10日かかっています。
その結果、立替金の精算が遅れて現場の不満が溜まり、月末には紙が一気に集まって経理1名(総務兼任)の残業要因になっています。
実現したいこと
- 現場からスマホだけで申請を出せる状態にする
- 申請から承認完了までを1~2日に短縮する
- どの申請がどこで止まっているかを見える化する
- 月末に集中する経理処理を平準化する
改修の概要
現状は、現場担当者が紙の精算書に記入して週1回の事務所立ち寄りで提出し、そこから社長の承認、経理の処理へと紙が順に回って、1件の完了まで平均10日かかっている状態です。
週1回しか紙が動かないため、承認の速さ以前に「紙が事務所に届くまで」が最大の待ち時間になっています。
改修後は、Microsoft Forms(スマホから使える入力フォーム)で現場から直接申請する形にします。
領収書は写真を添付し、科目は選択式にして、入力項目は5項目以内です。
申請が送信されると、Power Automate(Microsoftの自動化サービス)が社長のTeams(Microsoftのビジネスチャット)に承認依頼を届けます。
社長はスマホの1タップで承認または差し戻しができ、結果は共有台帳に自動記録されて、申請中、承認済、差し戻しのどの状態かが誰でも見える形になります。
紙の移動そのものをなくし、申請の完了を平均10日から1~2日に縮める改修です。
使用する技術構成
| 役割 | 使用技術 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 現場の人が触る部分 | Microsoft Forms | この規模・この業態の要件は「現場から出せること」が全て。手袋・移動中を考えて入力は5項目以内、科目は選択式、領収書は写真添付にする |
| 承認者が触る部分 | Teamsの承認通知 | 社長がスマホの1タップで承認・差し戻し。差し戻し時はコメント必須にする |
| 裏側の処理 | Power Automateの承認フロー | 社長承認と経理確認の2段。15名企業に多段承認は不要で、金額の分岐(例: 10万円以上のみ事前相談)だけ設け、通常申請は即日で流れる形にする |
| 記録・見える化 | SharePointリスト(Microsoft 365に含まれる共有台帳の仕組み) | 申請中・承認済・差し戻しのステータスを自動記録し、どこで止まっているかを見える化 |
効果試算
前提として、人件費単価は現場作業2,000円/時・事務2,500円/時(職種別単価・福利厚生込み概算・推定)を使います。
申請件数は月20件(現場10名×月2件)と仮定
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 現場側の1件あたり所要時間 | 約15分(記入・提出の段取り) | 約5分(スマホ入力) |
| 経理側の1件あたり所要時間 | 約15分(受領・転記・催促) | 約5分(確認のみ) |
| 対応件数 | 月20件(年240件) | 同じ |
| 年間人件費換算 | 約27万円 | 約9万円 |
年間削減効果は約18万円(約80時間)と試算しています。
金額に出ない効果としては、申請完了まで平均10日かかっていたものが1~2日になること、立替精算の遅れによる現場の不満が解消されること、月末の経理残業が平準化されることがあります。
運用コストの目安(構成パターン別・推定)
| 構成 | ランニングコスト(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|
| A. Microsoft 365既存ライセンス活用型 | 追加費用ほぼなし(既存ライセンス内で構築) | すでにMicrosoft 365を全社導入済み |
| B. ライセンス追加型 | 1人あたり月1,000円前後のライセンス費 | 現場担当分のアカウントが未整備 |
15名規模で既にMicrosoft 365を使っていれば、ランニングコストはほぼ増えません。
構築費用は申請の種類数や承認ルートによって変わるため、個別にお見積りします。
リスクと対策
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 領収書写真の不備 | 現場からの申請は写真がブレる・添付を忘れるが頻発する | 添付なしでは送信できないフォーム設定にし、「読めない写真は差し戻し」を最初に周知する |
| 電子帳簿保存法の保存要件 | 領収書写真の保存方法に要件がある | 保存先とファイル名規則を先に決め、税理士に確認してから運用開始 |
| 現場のITリテラシー差 | 10名の中に必ずスマホ操作が苦手な人がいる | 導入初月は「紙でも受け付けるが処理は遅い」の並行期間を置き、速さの差で自然移行させる。強制より定着する |
| 社長がボトルネックになる | 承認者が1人のため、社長の未処理が全員の精算を止める | 48時間未処理の自動リマインドと、長期出張時の代理承認(経理が仮承認し事後確認)を最初から入れる |
| 差し戻しルートの設計漏れ | 「承認/否認」だけ作ると、修正のたびに申請者が最初から入力し直しになり、現場の不満で定着しない | 否認(却下)と差し戻し(修正して再申請)を別ルートで設計する。承認フローの試作で最初に露呈する典型箇所 |
導入の進め方と期間の目安
標準的には次の4ステップで、合計1~1.5ヶ月が目安です。
期間は推定で、申請の種類数によって変動します。
Step1. ヒアリング・現状把握(約1週間)
申請の種類・科目・金額の分岐・現在の承認の流れを確認する。
電子帳簿保存法の保存要件を整理する。
Step2. 構築(約1週間)
フォーム・承認フロー・共有台帳を構築する。
テスト申請で承認と差し戻しの両ルートを検証する。
Step3. 並行運用(約1ヶ月)
紙とフォームの両方を受け付ける。
現場が慣れるのを待ちながら実データで動作を確認する。
Step4. 本稼働
フォームに一本化する。
以後の例外(紙の領収書しかない場合等)の扱いも運用ルールに残す。
お客様にお願いすることは、過去の精算書サンプルのご提供、社長・経理ご担当者との週1回・30分程度の打ち合わせ、並行運用期間中の現場への声かけの3点です。
この構成が向く会社・向かない会社
次の条件に当てはまる会社なら、この構成の効果が出やすくなります。
- 直行直帰・外勤中心で、紙の回覧が業務の待ち時間になっている
- Microsoft 365を導入済み(または導入予定)
- 承認者が1~2名で、承認ルートがシンプル
逆に、申請が月数件しかなければ紙のままで十分です。
承認段数が多く規程が複雑な会社は、フロー構築の前に承認ルート自体の整理が先になります。
Google Workspace中心の会社では、同じ考え方をGoogleフォームと別の自動化ツールで組む構成になります。